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  4. 2017.12.12

キラリと光る!中小企業(第1回)
古くて新しい素材「エボナイト」で町工場から世界へ! 日興エボナイト製造所の挑戦


皆さんは「エボナイト」という素材をご存じでしょうか。

天然ゴムに硫黄を加え、熱して製造する硬く光沢のある合成ゴムのことで、黒壇(エボニー)に似ていることからエボナイトと呼ばれています。高い絶縁性や耐薬品性、熱伝導性の低さ、加工のしやすさなどから、かつては電気のスイッチや操縦桿、ボウリングの球や電気絶縁部品など様々な用途に使われてきました。

現在では加工がより容易なプラスチックにとって代わられ、エボナイトを使って作る製品は徐々に減っていきました。現在ではエボナイトを製造するメーカーは世界でも数社しか存在しません。

需要減の中、高い技術力を武器に操業を続ける

そのうちの一社、株式会社日興エボナイト製造所がエボナイトを使った製品の開発、販売で販路開拓に取り組んでいるという話を聞き、工場にお邪魔して製造工程を見学させていただきました。

東京都荒川区にある日興エボナイト製造所は、現在の代表取締役 遠藤智久氏の祖父である遠藤勝造氏が1952年に創業しました。工場の中にある古い木の屋根や柱はこの会社が歩んできた歴史を感じさせます。

エボナイトの需要が徐々に減りエボナイトメーカーが次々と廃業する中、現在まで操業を続けられたのは、高い技術力があったからです。天然ゴムと硫黄を配合し加熱することで硬い硬質ゴムに変化するのですが、質の高いエボナイトを作るため、純度の高い天然ゴムを使い、硫黄も独自の比率で配合しています。

写真は材料を練ってローラーで伸ばした板状のエボナイト原料です。

これを加熱し、棒状にしたものがエボナイト棒で、素材としてのエボナイトの発注には棒の形で納品されます。顧客の要望に合わせたさまざまな形や長さのものが作られています。まだ温かく柔らかいエボナイト棒を手作業で切っていく様はまるで飴切り職人を見ているようでした。

会長の遠藤昌吾氏。創業者である遠藤勝造氏も104歳まで現役だったそう


次に見せていただいたのは様々な形に金型を用いて成形するプレス機のあるエリアです。
会社の創業当時から使われているという趣のあるプレス機械と、最新の加工機械が一緒に置かれているその部屋では、エボナイト製の様々なものが加工されています。

プレス機で作られていたものの一つはキャスターの車輪。
耐油性や耐荷重性にすぐれているエボナイトが中心部に使われているのだそうです。
また別のプレス機では木管楽器用のマウスピースが作られていました。昔からマウスピースにはエボナイトが使われていたようで、くわえた時の独特の質感と音色の良さに人気があるのだそうです。

昔ながらのプレス機と最新鋭の加工機械で作る伝統と革新

最新の機械の前では万年筆の軸を削る加工が行われていました。手にしたときにひやっとしない触感や加工精度の高さからエボナイト製の万年筆は愛好家の中では人気なのだそうです。

前社長である会長がいまだ現役で職人に指導を行う横で、20代の若い職人が最新の機械の前で作業を行っている様子は、まさに古いものと新しいものとの融合を感じさせました。

もともとは、素材としてのエボナイトしか作っていなかった同社ですが、リーマンショック後、売上が大幅に落ち込んだ時期、遠藤氏は現状に危機感を覚え、最終製品を自社で開発し、加工、販売する道を模索します。万年筆の他にもベルトのバックル、ギターピックなどさまざまな物にチャレンジしました。その中で一番手ごたえを感じたのが万年筆でした。

工場の2軒ほど隣にあるのが、万年筆をはじめとした様々なエボナイト製品を直接販売する店舗「笑暮屋」です。

エボナイトの新しい道を模索する「笑暮屋」

店舗には色とりどりのマーブル柄や竹をかたどった形のいろいろなサイズの万年筆やボールペンが並んでおり、その格式を感じる色と艶に目を奪われます。
手に取ってみるとしっとりとした温かみを感じ、万年筆の愛好家がエボナイトの軸を好むのも頷けます。

もともとの素材が黒いエボナイト。綺麗な色を出すのは当初かなり苦労したそうですが、マーブル柄はひとつひとつ柄の出かたが違うため、自分だけの1本を選ぶ楽しみもあります。
現在はこの「笑暮屋」を始め、自社ネットショップ、有名百貨店や文房具店での催事などに販売網を広げています。

「実際に消費者に販売する」という販路開拓の他に、もう一つ広げた販路が「海外」です。

2011年からBtoBマッチングサイトAlibaba.comへの出展を始め、毎日のように世界中から問い合わせが来るのだそう。

どのような問い合わせがあったか聞いてみたところ、ほとんどがエボナイト素材への問い合わせとのことですが、喫煙用パイプの吸い口用に使いたい、ハンティングに使うダックコール(鴨をおびきよせるための笛)を作りたい、ロールスロイスのヘッドライトの台座のレストア用に使いたい、またバウハウス建築を修復するのに当時と同じ素材であるエボナイトが欲しいなど、海外ならではのユニークな用途での問い合わせも多く入ってきているそうです。

「日本でも、僧職の方がふらっと工場にいらっしゃって、袈裟の留め具を作りたいという要望をいただいたこともありますよ」と遠藤社長。
袈裟輪という袈裟の留め具は、現在では入手が難しくなった象牙で作られており、それに代わる高級感のある素材を探していたのだそうです。

プラスチックとは全く違う温かみと高級感を持つエボナイト。
その素材の良さをもっと多くの人に知ってもらうため、遠藤社長は荒川区の「モノづくり見学・体験スポット」に参加し、工場見学を積極的に受け入れています。また中小企業の若手経営者、事業承継者が交流する場の創出など、中小企業の横のつながりを深め、自社製品や他の中小企業の製品を世の中に紹介する活動も行っています。
「ARAKAWA INDUSTRIAL EXHIBITION」もそのうちの一つ。荒川区で作られたそれぞれの企業が技術を活かした個性的な製品を直接消費者に手に取ってもらい、知ってもらおうというイベントです。
弊社のメンバーもイベントにお邪魔させていただきましたが、技術力のある工場が作った本物を探すお客様で大盛況だったようです。


工場と店舗を見せていただいた後、わたしも他にもエボナイトで作れる製品がないかいろいろと考えてしまいました。あまり身近に存在しない艶と輝きを持つエボナイトは、それほど魅力的な素材に感じました。
海外においても、エボナイトで作るオリジナル製品、素材としてのエボナイト、両方の販売に力を入れていきたいと語る遠藤社長。エボナイトが再び世界のいろいろな製品に活用され、注目されることを期待したいと思います。

・日興エボナイト様 会社サイト
https://www.nikkoebonite.com/

・笑暮屋 オンラインショップ
https://eboya.net/

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Introduction

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