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  3. 2018.05.15

「農泊」で地方創生。インバウンドが農村漁村にもたらすビジネスの可能性


訪日外国人のニーズは「モノ」から体験重視の「コト」に移りつつあり、これまでは都市部が主流だった観光についても、地方が注目され始めています。インバウンド需要を活かしていくためには、受け入れる側も、単に「見る」だけの観光名所を巡るスタイルとは違った楽しみ方を提供する必要があります。ここでは滞在型の旅として話題を集めている、「農泊」の事例を紹介していきましょう。

「農泊」とは ?

「農泊」とは農林水産省が積極的に支援している、農山漁村滞在型旅行を指します。地方への誘客策として今、大きな期待がよせられています。

農泊では、農業や漁業などの一次産業を体験しながら古民家や農家・漁家に宿泊し、地方独自の文化を肌で感じることができます。開発された観光地とは違う、それぞれの土地に根付いた魅力を発見・体感する新しい試みです。

国が力を入れる狙いとしては都市型生活者と農山漁村の交流に加え、今後も増加傾向が見込まれる訪日外国人に対しての、日本の多彩な地方色の認知や理解の推進があります。農泊の浸透により得られる効果には、地方の過疎化や空き家問題の解決、インバウンド需要による地方財政の回復などが挙げられるでしょう。公費に依存せず、自立した継続可能な事業を展開することで、地域活性化を目指します。

農泊に対しては一般的な民泊よりも規制が緩やかに設定されているため、個人の参入が比較的容易です。また、農林水産省では農山漁村振興交付金に「農泊推進対策」を新設し、さらに観光庁とも連携しながら、人の流れを地方へと誘う取り組みを実施しています。

次の項では実際の事例を見ながら、農泊の内容や成果について解説していきます。

年収350万円超えの農家も!「安心院発グリーンツーリズム」(大分県安心院町)

「安心院方式グリーンツーリズム」発祥の地と呼ばれる大分県宇佐市安心院町には、年間1万人もの観光客が訪れます。1996年の開始当初は80人程度だった訪問者が、年々増加の一途をたどった経緯には、感動体験を提供するための数々の工夫が見られます。

1日1組を原則とし、農作業や食事づくりなど農家の日常そのままを子どもたちが体験する教育旅行には、60軒の農家が参加。「親戚カード」を発行し、農泊するたびにハンコが貯まります。10回の宿泊で「親戚の証」がもらえ、心温かい交流の継続につながっています。

農泊による年間売上は平均120万円、なかには350万円もの収入を得ている農家もあります。直接的な農業所得の向上効果とともに、農産物直売所の売上にも貢献しています。

最近では海外からの社員旅行も受け入れており、国際的な交流の場としての存在感も増しています。グリーンツーリズムの本場であるヨーロッパへの「GT欧州研修」を立ち上げ当初から実施している他、国内外から訪れる視察団体の研修会場を創設するなど、成功の陰には常に情報収集と研究を重ねる姿がありました。

コンセプト統一で世界中から集客!「春蘭の里実行委員会 」(石川県能登町)

「10年後に農家が半減」する危機感から、農泊事業を開始したのが石川県能登町です。地元の会社員や移住者を含む異業種の有志7名が、地域の過疎化に危機感を覚え「春蘭の里実行委員会」を立ち上げました。

1997年の開始当時はたった1軒だった農泊施設が、現在では50軒にも迫ります。年間30人程度だった来訪者数も現在では1万2000人を超え、月収40万円を達成する農家もあります。中国、イスラエル、タイ、欧米など幅広い旅行者の顔ぶれから、その人気ぶりが伺われます。

ポイントとなっているのは、「1日1客」「輪島塗の膳」「地元産の食材」「化学調味料を使わない」といったコンセプトの統一です。地域の魅力を明確にし、質の高いもてなしを保つことで、農泊事業の成功につなげています。さらに黒瓦、白壁といった独自の住居景観を保全し、廃校を活用した宿泊施設を開業するなどの取り組みも行っています。地域に対する愛情と訪問客を失望させない心遣いの表れといえるでしょう。

地方創生の新たなカギに

農泊はアグリツーリズムやグリーンツーリズムなどとも呼ばれ、とくにヨーロッパではかなり前から定着しています。フランスではバカンスに農泊を選ぶ人も多く、近年人気のある観光先となっています。

当たり前に存在するものの価値に気づくことは難しいものですが、視点を変えれば豊かな経済資源ともなり得ます。急増するインバウンド需要をうまく呼び込めれば、地方創生のカギとなる可能性があります。

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