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  4. 2018.06.05

国内外でアナログレコードが復活。世界にレコード針を届ける老舗企業の活躍


CDの売り上げが落ち込み、音楽の入手方法はデジタル配信へと移行が進んでいます。AIスピーカーやAI家電といった新しい技術、サービスが進化している中で、今、アナログレコードの魅力が世界的に再認識される傾向が見られます。

時代の変化とともに同業者の撤退を目の当たりにしながらも事業を続け、レコード針を世界中に届けている老舗企業の取り組みに注目しました。

レコードブームを復活させたのはデジタル世代

世界のレコード売上は2006年から2015年の10年間で、12倍に達しています。日本国内でも、ここ10年間でもっとも売り上げが落ち込んだ時期と比較して8倍の伸びを見せ、2016年の国内生産枚数は79万枚となりました。

大きなきっかけとなったのが、ポール・マッカートニー氏らが始めた「レコード・ストア・デイ」です。近隣のレコードショップに出かけて、CDやアナログレコードを手に取ろうと呼びかけるこの運動は、音楽関係者らの賛同によって世界的な広がりを見せています。

レコード復活のけん引役となったのは主に英国、米国の若者ですが、日本でもブームの中心となっているのは、アナログレコードにノスタルジーを求める中高年ではなく、30代の若い層です。

音楽の動向に敏感な世代が海外のレコード人気再燃にいち早く反応し、さらに影響力を持つ若手ミュージシャンたちが新譜を含めたレコードを発売したことでレコード人気が加速していきました。レコードジャケットのサイズ感がビジュアルとして魅力的であることや、音楽を聴くための手間が音楽好きを惹きつけているようです。

音楽業界大手のソニー・ミュージックエンタテインメント(SME)では、29年ぶりにレコードの自社生産を開始しています。国内ではすでに入手不可能なカッティングマシンを空輸するなど、レコード復活に向けた本格的な動きが注目されています。

職人による手づくりのレコード針を世界に「日本精機宝石工業」(兵庫県新温泉町)

デジタル音源にはない、柔らかさや深みのある独特の音を生み出しているのがレコード針です。兵庫県新温泉町に立地する従業員数約60名の日本精機宝石工業株式会社は、レコード人気を支えるレコード針を長きにわたって世界中に送り出しています。

1972年から作り続けてきたレコード針は現在2200種類にも及び、主要なメーカーのほぼすべてに対応するといいます。製品の91%は海外に輸出しており、要望に可能な限り応える姿勢が世界中の顧客からの支持を集めています。

レコード針の製作工程は手作業が多く、要となるダイヤモンドの針先はわずか直径0.25ミリです。機械化が困難な職人技によるものづくりの精神が、世界各国のレコードファンの耳を楽しませ続けています。

現在では人気が再燃しつつあるレコードですが、1980年代のCDの登場によってレコード針の需要は低迷の一途をたどりました。しかし、先代の「一人でも欲しい人がいるなら作り続けよう」という思いから、レコード針の生産が途絶えることはありませんでした。

ヨーロッパでは古いレコードを大切にし続ける家庭が多く、製造中止となったレコード針を求める客のもとに、日本精機宝石工業の製品が海を越えて届けられました。そうした地道でたゆまない会社経営の在り方が、現在、海外で幅広く「JICO(ジコー)」の名称で親しまれている日本精機宝石工業の姿を作り上げています。

昨今のレコードブームによって国内外の需要も急上昇し、レコード針が同社の主力商品として返り咲きました。他社が見捨てたレコードの魅力を信じ続け、音楽愛好家にレコード針を供給し続けた日本精機宝石工業のこだわりこそ、日本の中小企業らしさといえるのかもしれません。

復活する市場に注目を

デジタル化が急進する現代にも、アナログの良さが認められる分野は存在します。今後もレコードのように魅力が再認識され、復活する市場がまだまだありそうです。再び世界に美しい音を響かせ始めたアナログレコードの今後に注目していきましょう。

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