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  3. 2018.07.23

キラリと光る!中小企業(第9回)
お客様と社員の立場を考えた改革で成長を続ける部品加工会社。株式会社テルミック


2018年5月、ものづくり基盤技術の振興に関わる施策を報告する「2018年版ものづくり白書」が発行された。
その中では、顧客や市場ニーズの急速な変化、技術革新の速さといった環境変化にさらされる製造業の課題と、課題への対応策として「現場力の維持・強化、デジタル人材等の人材育成対策」「新たな環境変化に対応した付加価値向上」が提示されている。

今回、取材させていただいた株式会社テルミックは、1995年創業の部品加工会社。
自動車、医療、航空宇宙など幅広い業界に欠かせない部品を製造し、近年、急激に業績を伸ばしている。
先述の「2018年版ものづくり白書」に示された方向性を先取りし、IoTの積極的な活用で現場力の強化、経営のスピードアップを図り、厳しい環境変化に対応している企業だ。

取材に対応くださったのは、田中秀範代表取締役。
刈谷本社を案内いただきながら、IoTの活用を進めた経緯、活用による社内の変化等について教えていただいた。

社内で情報を共有し、業務効率を上げる徹底的な「見せる化」

テルミックのオフィスは、まるでカフェのような明るい空間。社員のデスクは一定の距離を保って配置され、人が快適に感じる空間が確保されている。

「会議室や応接スペースもすべてガラス張り。職場を開放的にすると自然と情報共有がされ、問題があっても大きくなる前に対処ができます。営業所間の会議も、サーバーにつながった大きなモニターとスカイプを使ってリアルタイムで行います。一か所に社員を集め、資料を印刷して配るという、会議にかかってきた労力を削減でき、業務の効率化が実現していますね」

あらゆる場所にはモニターが設置され、社内に蓄積された情報をいつでも誰でも確認できる。モニターを見れば、案件の進捗状況やお見積りなど、お客様が求める情報を即時回答できる。
配送状況をリアルタイムに追跡できるモニターでは、同社の配送車が地図上のどのエリアにいるのかが一目瞭然。効率的な集荷、配送を実現できる。
配送車をモニターに表示させる仕組みは一見難しそうだが、ドライバーの携帯電話についたGPS機能を利用したシンプルなもの。わずかな投資で実現できる。

各担当の営業成績をゲーム感覚で見せているのも特徴的だ。
受注が決まると、カジノ風のボードに表示される。売上目標の達成が近付くよろこびを味わえることはもちろん、自然と社員が売上を気にかけるようになるそうだ。
これらは、IoTを活用したテルミックの「見せる化」だ。同社は年間約300件の工場見学を受け入れ、多くの企業の助けになればと、「見せる化」に関する仕組みを公開しているそうだ。

最短見積40分、最短納期1日を実現する「外に出ない営業」

同社の方針としてもうひとつ特徴的なのが「外に出ない営業」だ。オフィスを見渡すと、若い女性社員が数多く働いている。
「営業イコール外回り」という常識から脱した理由は、従来の営業スタイルはお客様のニーズとずれていないかと、社長自身が疑問に思ったことが契機だった。

「まず、外回りは移動に時間を要します。移動中、打合せ中にお客様から問い合わせをいただいても、帰社するまで回答できない。スピードが大切な製造業にあって、タイムラグが大きいんです。そこで、弊社の営業社員は常に在席させるようにして、お客様からのお問い合わせに即対応できるようにしました」

技術的にレベルが高い案件が舞い込んだ場合は、社内のエンジニアに確認をとって回答している。蓄積された数十万件の情報をその場で検索できるので、見積もりを最短40分で出せるようになり、結果的に受注率が向上したそうだ。

これまでの常識を捨て、社員が働きたくなる環境を整備する

創業以来、自動車部品の加工を主業務としてきたテルミック。
「売上のほとんどが自動車関係で、数社との取引に依存している状況でした。安定はしていましたが、『2040年問題』を考えると、なんとかしなくてはという思いがありました」

2040年は、世界各国で電気自動車の導入が徹底されるタイミングとして知られている。それが現実となる場合エンジン部品は不要となり、取引の激減が予想されたのだ。田中社長は、数社だった顧客数を増やしていく方針を固めた。

その方針を実現するためには、一定数の社員を確保すること、かつ少数精鋭で顧客の要望に対応する仕組みづくりが急務だった。まず、社員数の確保だが、製造業の人材採用は非常に厳しいという現実に直面する。

「製造業の3Kイメージを変える必要性は感じていましたが、今の若者や女性は、終身雇用という概念にとらわれていないし、ワークライフバランスがとれて毎日が充実し、快適に働けることを重要視していることも多い。
最初その考え方に驚きましたが、この先の日本を支えるのは若者ですから、自分の常識は一旦置いて考えようと決めました。彼らが働きやすいと感じる職場環境を整え、彼らのやる気に直結する仕組みをつくっていったんです」

それが、先述した「見せる化」が徹底された明るい職場であり、バラエティーに富んだ制度や仕組みだった。

例えば、「2+1制度」は、仲の良い2人と、他部署の1人が誘い合って終業後の食事に行く場合、3行のレポート提出を条件に1,500円を支給する。社内の情報共有が自然と進むだけでなく、残業せずに帰る習慣がつく効果も見込まれるそうだ。今後、さらなる業務効率化を実現し、勤務時間をできれば6時間台にしたいと田中社長は話す。

女性が8割、30歳未満がその内の9割を占める職場では、産休・育休の整備も重要だ。産休・育休中の社員は在宅勤務も可能で、多様な働き方が認められている。女性がいきいきと働ける環境が整うと、男性社員も自然と明るく前向きに仕事をしてくれるようになった。
さらに、短時間で業務に対する充実感を感じてもらえるよう、3か月で一通りの業務が身につくマニュアルの整備や、年2回の昇給チャンスを設けるといった仕組みを整えた。

さまざまな取り組みが功を奏し、5年前は30人ほどだった社員数は2018年6月現在で110人を数えるまでになった。それでも、売上や業務量の増加ペースと比較して、急激に増えているわけではない。人的リソースをIoTで強化することが重要だと考えている。
さらに、取引先は大口の約4社から約2,500社へと増加し、経営方針に向かって見事なほどに前進した。売上に関しても、今年度は昨年の20億円から30億円へのジャンプアップを目標としており、その達成も見えている。

世界中のものづくりを支えるための、スピード感と高品質

顧客増を目指すアプローチとして海外展開を見据えた田中社長。
ある時5日間の日程でドバイの展示会に参加したが、商談の時間は実質1日。同じ投資をするなら、国内で会社経営にあたりながらアリババを利用し、テルミックの技術力・対応力を世界中に知ってもらいたいと考えたそうだ。
さらに今年は、常滑に工場、中国深圳に中継所を新設し、名古屋事務所には中国語と英語での取引に対応できる体制を整えた。

「私たちは、IT技術を利用した『見せる化』と『外に出ない営業』で、お客様の要望に応え続けたことで、信頼されてきました。日本の製造業はコストが高く、海外展開のハードルは高かったのですが、細やかな対応やスピード、そして高品質、不良率の低さといった価値は、世界で戦う武器として通用すると思います。
世の中で使われているすべてのものは、誰かがつくっている。私たちは、部品加工のプロフェッショナルとして、世界中のものづくりを支えたいんです」

テルミックの顧客が海外へと広がりを見せ、世界中のものづくりをサポートする日も近そうだ。

株式会社テルミック
http://www.tel-mic.co.jp/

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岡島 梓/フリーライター

執筆者紹介文:

想いや考えを言葉で伝わる形にする、インタビュアー、ライター、リライター。
インタビューを中心とした記事の作成、キャッチコピーの開発、書籍の執筆・校正を通じ、伝えたいことを理解しやすく、表現に触れる方の心を損なわない形に再構築している。

早稲田大学第一文学部卒業後、東京地下鉄株式会社へ入社。人事業務に従事し、退職後ライターとしてのキャリアをスタート。近年は主に、地域で頑張る会社や事業、人々の魅力を伝え、求人や事業発展といった「はじまり」につながる記事を手がけている。

主な実績
・東京都・インキュベーションHUB推進プロジェクト
「イッサイガッサイ 東東京ものづくりHUB」記事執筆
https://eastside-goodside.tokyo/writer/50
・中小機構「TIP*S」キャッチコピー・理念等の文章化
https://www.facebook.com/tips.smrj/posts/1786551598034807
・江東ブランド2018 記事執筆(部分)
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・すみだの仕事記事執筆(部分)
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