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  4. 2018.08.28

キラリと光る!中小企業(第10回)
誰もがポジティブに生きられる社会をつくりたい。日進医療器株式会社


障がいがある人もない人も、ともに住みやすい社会を。障がいに基づく差別を禁じ、平等な機会や待遇を保証する法律「障害者差別解消法」が2016年に施行されるなど、バリアフリー社会への意識は年々高まっている。

今回ご紹介するのは、「全ての車いす利用者が精神的に豊かな生活を送ること」を目標に事業を進めてきた日進医療器株式会社。1964年に車いすの製造を始めて以来、時代に先駆けて、誰もがポジティブに生活できる社会を目指してきた。

自動車部品メーカーとして創業した同社が車いすの研究に着手したのは、創業者である先代社長が、1964年の東京パラリンピックで活躍するアスリートの姿に感銘を受けたことがきっかけだった。同時に、経済発展にともなう車いすの普及を予測し、ドイツや北欧諸国の普及品を入手して試行錯誤を繰り返した。

たゆまぬ研究を続け、車いすを中心とした医療機器の設計から製造、販売までを手がけるリーディングカンパニーとなった同社。今回は、同社の強みと海外展開にかける想いについて、松永圭司社長と海外事業を担う亀野敏志氏のお二人にお話を伺った。

ユーザーの毎日を変える車いすを生み出す傾聴力と具現力

オーダーメイド車いすの分野で、国内シェア約60%を誇る同社。車いすのスムーズな動きや快適なシーティングを実現するためには、一人ひとりの体格はもちろん、使用環境も配慮し、細かな計測や要望のヒアリングが必要とされる。
現在は、全国に点在する販売店のスタッフがユーザーの希望を伺い、時には、ユーザーの家族やリハビリセンター、ドクターへのヒアリングも重ねながら設計に落とし込んでいく。

「一過性の怪我といった場合を除き、ユーザー様とは長いお付き合いになります。ヒアリングに基づいて車いすの改造や修理もうけたまわっていて、毎日約20~30台の車いすが全国から当社に持ち込まれます。それを見ると、多くのお客様の支えとなっていること、その支えをもう一度当社に預けてくださることに身の引き締まる思いです」(亀野氏)

高い傾聴力とともに同社が強みとするのは、素材へのこだわりと高い技術力。素材メーカーとともに開発した高強度で軽い特殊な合金。そして1.2mm~1.8mmという極薄肉の部材を加えて曲げて溶接する技術は、自動車メーカーにも認められている。
素材が生み出す驚くほどの軽さを生かした設計は、高い合成を生み出し、乗り心地と駆動性に優れ、同社の車いすは日常利用だけでなく、高い性能を求める多くのプロスポーツ選手にも選ばれている。

「時には社員が選手の試合にも同行し、試合中の車いすの動き方などもチェックします。密なコミュニケーションを重ねてつくりあげた車いすで活躍する選手の姿は、社員にとっても励みになっています。2020年の東京パラリンピックに向けた動きも加速しています。前回の東京大会から事業のきっかけをいただいた当社が、今回は選手の活躍をサポートできると思うと感慨深いです」(松永社長)

同社の発展を支える、技術者のチャレンジ精神

車いす業界のリーディングカンパニーでありながら、同社の名をさらに知らしめたのはチェアスキーの存在だ。2018年の平昌パラリンピックで、チェアスキー選手の村岡桃佳さんが5つのメダルを獲得したことは記憶に新しい。村岡選手だけではなく、種目によっては入賞選手のほとんどが同社のチェアスキーを使用しており、競技関係者内の口コミで選手から直接コンタクトがあることもめずらしくないそうだ。

しかし、創業時の車いす同様、チェアスキーの設計・製造も試行錯誤の連続だった。

「そもそもチェアスキーは車輪がないですし、当社は無関係だと思いますよね(笑)。ところが『長野五輪(1998年)に向け、日本製のチェアスキーを開発してほしい』と打診がありました。当時も、車いすの設計と製造であわただしかったのですが、そんな中でチェアスキーの研究に熱心に取り組んでくれた技術者がいたんです。そのチャレンジによって当社も新たな分野に進出でき、チェアスキーの開発で得た知見が車いすの開発にも生かされています(松永社長)

お客様の立場によりそい、要望に応える姿勢は不変

日進医療器株式会社がアリババの利用をスタートしたのは、2015年6月。中国やアメリカに工場を建設していることもあり、海外展開のきっかけづくりとして選択したそうだ。
車いすの普及率は経済発展と社会の成熟度と相関関係にあり、発展を続ける海外での需要が高まることは想定できた。しかし、海外の展示会出展は継続するのは難しく、アリババのページを展示会の会場だと想定してつくりこむことにしたそうだ。

「それでも、最初の3か月は問い合わせが来るものの、その後の返事が途絶えるケースが頻発しました。車いすの場合、フレームの長さとか角度のような、数値で表されるスペックを伝えても、その場に実物がないとピンとこない。なので、この製品はどんな場面でどんな使い方をするのかといった使用状況をイメージできるような情報と、当社の国内実績を伝えることにしました。
そうすると先方から『こんなものはつくれるか』『こんな状況で困っているがどうしたらいいか』などと相談されるようになったんです(笑)。商談というよりはまさに相談だったので最初は驚きましたが、ご要望のヒアリングは国内で長年続けてきたこと。海外も変わらないんだと気付きました。お悩みという原点から一緒に製品を育てていくという姿勢がよろこばれたのか、結果受注につながるケースも増えてきました。国内の高い実績も、信頼感の獲得につながったようです」(亀野氏)

現在は、バスケットボール、マラソン、チェアスキー等のプロスポーツ選手や、アクティブユーザーからの注文が多く、技術力が問われる分野では、価格面でも海外と充分戦えるそうだ。さらに、イギリスのある法人とは2017年に販売店契約を締結。レーサー車いすを中心とした競技用車いすの国内普及に取り組んでいる。

亀野氏は、中国(拠点:常州)での営業・マーケティング経験から現地向けカスタマイズの重要性も感じていた。お客様によりそうという姿勢は、海外でも変わらない。地域ごとに異なる人々の体格や社会インフラの整備状況によって求められそうな車いすを分類し、アレンジを加えている。
これからは、日常的に外出し、自立した暮らしを送るアクティブユーザー向けの車いすを世界中に届けていきたいと話す。

最後に、松永社長に今後の展望を伺った。

「もちろん、利益は追い求める必要はありますが、海外展開については長いスパンで見ています。私たちの車いすは世界に必ず受け入れられるはずだ、求められるはずだという確信があるから、続けていけます。これからも、世界中の車いすユーザーの方がさらに便利で心豊かな暮らしを送るサポートをしたいですし、場面ごとに使い分けができるほど、車いすが当たり前の社会インフラとなるようにしていきたいです」

日進医療器株式会社
http://www.wheel-chair.jp/

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岡島 梓/フリーライター

執筆者紹介文:

想いや考えを言葉で伝わる形にする、インタビュアー、ライター、リライター。
インタビューを中心とした記事の作成、キャッチコピーの開発、書籍の執筆・校正を通じ、伝えたいことを理解しやすく、表現に触れる方の心を損なわない形に再構築している。

早稲田大学第一文学部卒業後、東京地下鉄株式会社へ入社。人事業務に従事し、退職後ライターとしてのキャリアをスタート。近年は主に、地域で頑張る会社や事業、人々の魅力を伝え、求人や事業発展といった「はじまり」につながる記事を手がけている。

主な実績
・東京都・インキュベーションHUB推進プロジェクト
「イッサイガッサイ 東東京ものづくりHUB」記事執筆
https://eastside-goodside.tokyo/writer/50
・中小機構「TIP*S」キャッチコピー・理念等の文章化
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・江東ブランド2018 記事執筆(部分)
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・すみだの仕事記事執筆(部分)
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