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  4. 2018.09.13

キラリと光る!中小企業(第11回)
こだわりの伝統食品で、人びとの健康で豊かな生活を創造する。 株式会社ヤマサン


健康志向の高まりから、世界的に注目を集める食材となった日本茶。とりわけ、ドリンクや食品に利用される抹茶の需要は非常に高く、日本からの輸出量は拡大を続けている。

今回取材させていただいた株式会社ヤマサンも、海外の高い抹茶需要に積極的に応えてきた企業のひとつ。
京都府宇治市に本社を有する食品卸・小売業者として、高い知名度を誇る宇治抹茶の販売に力を入れてきた。
さらに、「安心」「安全」「美味しい」にこだわった食品を取り扱うという確固たる思いから、有機抹茶の輸出を続けている。

安全で、美味しい日本の伝統食を多くの人に知ってもらいたい

ヤマサンは、呉服の訪問販売会社として1993年に設立された。
しかし、1995年の阪神大震災を機に奢侈品である呉服の売上は激減し、あるご縁から味噌を中心とした食品販売へと移行した。商材は違っても、高品質な製品を対面販売することに変わりはなく、なんでもやってみようという思いだったそうだ。

そして、味噌の販売を始めた当初から、取り扱う食品は日本の伝統的な食材であること、無添加で、無農薬の素材を使っていることにこだわりを持っていた。

「創業者である私の父は、京都府の美山町(現 南丹市)で生まれ育ったのですが、驚くほど自然豊かな土地です。それと引き換えに、スーパーに行くのも一苦労(苦笑)。その分、美山町には作物が豊かに実り、地場で加工された食品も豊富です。
自然豊かな町で育ったおかげか父は今も健康で、豊かな自然に根差した日本の伝統食には人の健康を支える力があると感じているようです。取り扱う商品も、産地や作り手、原材料にこだわりたいという思いがありました」

そう話してくださったのは、専務取締役の大秦哲兵(おおはたてっぺい)氏。
ヤマサンの後継者として従業員の成長環境を整え、スタッフの意見を積極的に新規事業に活かしてきた。

つながりを活かし、自分たちだからできる商品を開発

徐々に販売量が増え、訪問販売から通信販売へと切り替えが進む中、商品を直接販売する場として、自社でセレクトした安全で美味しい食品や自社製品を販売するアンテナショップ「茶願寿Café」をオープンした。
扱う商品への自信の表れから、今でもほとんどの商品は試食・試飲できる。
さらに、現在は商品開発まで手がけるようになり、メーカーの要素も持つ卸売り、小売業へと進化した。

「日本には素晴らしい食品がたくさんあり、その存在をもっと広く知ってもらいたいという気持ちがありました。そんな中、私たちが製品をつくるなら、ヤマサンだから生み出せる商品でないと意味がない。
当社の歴史を振り返って出てきたキーワードは、安心できる素材、味噌や醤油を扱う会社として身近だった発酵、そして、本拠地の宇治でした」(大秦専務)

同社はそれらを組み合わせ、2018年1月から『発酵緑茶』という商品を販売している。有機国産茶葉を黒麹菌で発酵させたお茶は、健康や美容に関心の高い40代女性を中心に、多くの支持を集めているそうだ。

「スタッフの意見を反映させながら、3、4か月かけて開発した商品です。商品をつくる過程で、私たちはずっと『つなぐビジネス』を続けてきたのかなと感じました。生産者さんとお客様、卸としてはA社とB社。これまで築いてきたつながりから商品開発もでき、そのつながりがあったからこそ私たちの事業が成り立っているのだと改めて感じました」(大秦専務)

海外への輸出を始めてからも、日本と海外のバイヤーを「つなぐビジネス」であるという本質は変わらないという。その海外に目を向けるきっかけとなったのは、前述のアンテナショップで体感したインバウンド消費だ。

販売までのステップは一手に引き受ける、一気通貫の対応力と細かな配慮

「『茶願寿Cafe』に、一度来て何も買わずに出られた海外の方が、観光の帰りにもう一度立ち寄って商品を買ってくださるということが続きました。その動きが気になって、なぜ戻ってきてくれたのかを訊ねると、その方は『他の店にオーガニック製品がなかったから』と教えてくださったんです」(大秦専務)

工場に有機農産物・有機加工食品の小分け免許を取得した責任者を置き、日本の有機JAS法に基づいた厳しい品質管理のもと、有機食品の小分け対応をするなど、「安心・安全・美味しい」食品を届けることを掲げていたヤマサンの思いと、オーガニックや産地への強いこだわりを持つ海外のお客様の需要がマッチしたのである。

さらに、立ち寄った茶願寿Caféで商品を購入した外国人旅行者が、帰国してから『商品を送ってほしい』というメールを送ってくるようになったのだそう。これらのことから、安心できる美味しい食材は海外にも需要があるのではないかと考え、大秦氏は2014年アリババの利用をスタートした。

海外事業部で顧問を務める今村育生(いくお)氏は、大手電機メーカーで培った40年のキャリアと海外経験を活かして転職し、現在はアリババで出会ったバイヤーとの顧客対応を担っている。

「現在、当社に寄せられるのは95%がOEMの相談ですが、商品をつくって販売するまでにはステップがいくつもあります。例えば、自社ブランドの抹茶を売りたいと思ったとき、どんな種類のお茶を選ぶのか、ランクはどうするか、どんな容器に詰めるのか、パッケージのデザインはどうするかなどと、決めることがたくさんあります」(今村氏)

同社の強みは、販売までのステップを一手に引き受けられるサポート力だ。

「販売価格に見合った茶葉の種類をお伝えしたり、現地で検討しやすいように、サンプルを送ったりします。依頼があれば、社内でパッケージデザインもできます。製造から販売までのステップを一気通貫で担えるので、多くのステップを任せていただいても中間コストがなく、工程ごとに別の会社が関わる場合と比べてタイムロスが格段に少なくなります」(今村氏)

さらに、そのサポートは非常にきめ細かい。完成に近付いた段階で、今村氏は試作品を動画撮影し、依頼主に送っているそうだ。はっきりと商品の状態が確認でき、大量生産後のトラブルを防ぐというメリットはもちろん、先方の信頼感が高まることは間違いない。

宇治の抹茶をきっかけに、日本の伝統食を海外にも広めたい

今村さんのもとで、海外バイヤーの窓口として活躍する李午婷(りごてい)氏にもお話を伺った。
「現在は、21か国62の会社と取引があり、一番取引量が多く、成約率が高い国がアメリカです。アメリカなどの先進国では健康志向への高まりから品質のよさ、特に有機茶であるかどうかが求められるようになっています。本当は抹茶だけでなく、日本茶そのものを売りたいという気持ちもあるんです。市場の開拓はこれからですが、京都・宇治のブランド力を活かして、抹茶以外の日本茶、さらに当社が扱うお味噌や醤油も届けられたらと思っています」

さらに、ヤマサンには、いつかは宇治でお茶を栽培するという夢もあるそうだ。

「実は、宇治でも廃業するお茶農家さんが出ています。市場が活況な抹茶のために高品質な『一番茶』が使われることが多く、安価な『四番茶』がペットボトルのお茶になります。しかし、高級品と廉価品の間で収穫される二番茶、三番茶が売れず、栽培を辞めてしまう事例が増えているんです。
私たちの事業は、こだわりを持った生産者あってこそ成り立つもの。宇治の地場産業を守るためにも、自分たちで有機栽培することも視野に入れたいですね」(大秦専務)

「こだわりの美味伝承を通じ、豊かなライフスタイルを創造する」という経営理念を掲げているヤマサン。
日本の伝統食を味わうことで価値観が変わり、日々の暮らしを豊かに感じられる生活者を増やすため、これからも成長を続けていく。

株式会社ヤマサン
  会社HP (http://www.kyotoyamasan.jp/)
  海外向けファンサイト (http://www.kyotoyamasan.jp/followus/)
  簡易版英語サイト (http://www.kyotoyamasan.jp/biz/)

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岡島 梓/フリーライター

執筆者紹介文:

想いや考えを言葉で伝わる形にする、インタビュアー、ライター、リライター。
インタビューを中心とした記事の作成、キャッチコピーの開発、書籍の執筆・校正を通じ、伝えたいことを理解しやすく、表現に触れる方の心を損なわない形に再構築している。

早稲田大学第一文学部卒業後、東京地下鉄株式会社へ入社。人事業務に従事し、退職後ライターとしてのキャリアをスタート。近年は主に、地域で頑張る会社や事業、人々の魅力を伝え、求人や事業発展といった「はじまり」につながる記事を手がけている。

主な実績
・東京都・インキュベーションHUB推進プロジェクト
「イッサイガッサイ 東東京ものづくりHUB」記事執筆
https://eastside-goodside.tokyo/writer/50
・中小機構「TIP*S」キャッチコピー・理念等の文章化
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・江東ブランド2018 記事執筆(部分)
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