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  4. 2018.10.26

キラリと光る!中小企業(第12回)
日本の食文化を守り、海外にだしのうまみを伝えたい。小林食品株式会社


日本人の食生活を支えてきた「だし」。だしに含まれる「うまみ」は5つの基本味のひとつとして世界的に認知され、和食ブームも後押しする形でだしの存在感が高まっている。

今回ご紹介するのは、だしの素となる削り節加工メーカー小林食品株式会社。全国有数のかつお節の産地、焼津で1982年に創業した会社だ。
加工された削り節やだしの出荷先は、食品メーカーや飲食店。具体的な会社名を伺うと、誰もが一度は口にしただろう食品の素材として使われていることに驚かされる。

「業界の中では最後発の会社だと思います。だからこそ、お客様のご要望に応えるために常にチャレンジし、ノウハウを蓄積してきました。スピード感も重視していて、急な注文にも対応できるよう、商品の在庫数を適切に管理することでお客様からの信頼を得られたと思っています」

そう話されるのは、2011年から同社の社長を務める小林大介氏。現在、顧客数は250社を超え、大手食品メーカーからも多大な信頼を得ることで売上は年々拡大している。

大ロットと多品種の安定供給を叶える設備投資

インタビューの前に、本社のある田尻工場でかつお節を削る工程を見学させていただいた。焼津をはじめとした国内外のかつお節業者から入荷されたかつお節は、巨大な冷凍庫内で管理される。

季節や入荷先、鰹そのものの性質によって原料の品質は異なってくるため、一律の管理・加工とはゆかず、常に神経を遣うそうだ。

「世界一堅い食べ物」と紹介されたこともあるかつお節。これを削っていわゆる「花かつお」に加工するため、水分を与える工程を経ていよいよ削り。
10ミクロン(100分の1mm)から1mmという幅でお客様の要望通りの薄さに削っていく。

削りたてのかつお節はしっとりとして、口に入れた瞬間ほどけていく。削り節は乾燥させた上で細かく破砕され、サイズを調整した上で商品に仕上げていく。
かつお節が大型の機械を通り抜け、流れるように加工されていく様子は圧巻だ。

「これまで、積極的に設備投資を行ってきました。35年間で工場4回増改築してますからね(笑)。当社は、伯父の会社から私の父(現会長)が独立してスタートしたのですが、先代社長は創業当初から大手メーカー様のご愛顧をいただき、大ロットのご注文に対応できるようにと熱心に取り組んだ結果だと思います」

大型かつ多数の加工機が揃ったことで、カスタマイズ力がついたことも同社の取引増につながった。

「食品メーカー様や飲食店様は、日ごろから商品の改良に取り組まれています。そんなときには、かつお節の産地や、削る厚みや形状を変えた新たなご提案もできますし、だしも液体から粉末、微粉末までおつくりできます。特に、製品のカスタマイズは手作業がほとんど。職人の勘が生きる場面です」

大手メーカーの求める高基準に挑戦し、磨かれた食品の安全性

工場の見学時に印象的だったのは、安全性への配慮。入室者は全員白衣と帽子を身につけ、粘着ローラーでほこりや髪の毛を除去する。
入室チェック表に書き込んだ後、エアシャワーをくぐり、徹底した手洗いを行う。工場内を衛生的に保つため、最新の注意が払われる。

小林食品は、田尻工場の削り部門でFSSC認証を受けている。FSSCとは食品を安全に作るためのHACCPというシステムに加え、環境の管理の安全性も含めた、現在世界中で注目されている最新の認証システムである。

「FSSCの存在を知ってからすぐに認定を目指して取り組みを始め、2018年に業界として一番最初に認定を受けました。食品メーカー様や飲食店様は、消費者に届いた食品に関する責任を問われるため、食品の安全性を最重要視しています。例えば、あるコンビニで売られたおでんのだしが当社のものでもそうでなくても、最終消費者にとっては単なる『コンビニのおでん』であり、責任は食品メーカー様が負います。消費者にもっとも近い食品提供者が、安全な素材以外使えないと考えるのは当然のことです」

特に大手食品メーカーは、安全な素材を大量に必要とすることから、自ずと素材加工メーカーへ求める基準が厳しくなる。
小林食品は、その宿題に回答し続けてきたことが実績となり、さらなる取引拡大へとつながったのだ。

「人生を丁寧に生きる」ための社員への投資

小林食品の投資は、機械設備にとどまらない。社員への還元、人材育成に積極的に取り組んでいるのが大きな特徴だ。社員の処遇や月次売上を見える化したこともそのひとつ。

給与を可視化することで社員は人生設計が描きやすくなり、安心して暮らせるという効果がある。さらに、社内の達成目標を言語化して達成すると昇給したり、月次の目標達成状況によっても還元するなど、社員のモチベーション向上に資する仕組みも設計した。

小林社長が大切にしているのは「人生を丁寧に生きる」姿勢。社員にも、自分の人生を能動的に生きてほしいと考えている社長は、さまざまな研修が受講できる体制を整え、学ぶ機会も数多く提供する。

「今年から会社に英語の先生をお呼びして、一部の社員にレッスンを受けてもらっています。これまで、英語ができないことで海外からの問い合わせに消極的な回答しかできなかったり、やりとりが続かなかったりという経験をした社員がいます。英語でコミュニケーションがとれていれば、自分たちの製品が世界に届いたかもしれない…という悔しい思いを学ぶ意欲に変え、頑張ってくれています」

自分から前に進もうとする意欲が、社長の話される「丁寧に生きること」につながっているように感じられた。

日本食は世界へ。だしが世界の食に浸透する未来

小林食品がアリババの利用をスタートしたのは、2016年9月。海外への販路開拓を検討するためにセミナーに参加したが、商社を経由せずに直取引できることも魅力に感じた。

「国内のお取引先は現在250社以上に増加しましたが、そのうち半数は商社が間に入っての取引です。そうすると、細かな部分が伝えきれずに対応にずれが出るケースがありました。言語も食文化も共有している国内ですら齟齬があるんです。海外のバイヤーさんと同じプロセスを踏むと思うと、想像するだけで大変。商社の方に初めてかつお節を見せられたバイヤーさんは、食品とすら認識してくれないと思います(笑)。『どうやって使うの? だしってそもそも何?』というところから説明が必要だと思いますし、だからこそ、削り節の魅力を伝える部分を人任せにしてはいけないという思いがありました」

開始以来、アフリカ以外の世界各国から問い合わせがあり、日本食を提供するお店、商社、独立開業を希望する個人の方など客層も様々だそうだ。

海外のお客様からは、大ロットへの対応力が高く評価を受け、同時に安全性については国内以上に厳しく審査される。FSSCの認証を受けていたことで、前提条件を備えた会社として海外バイヤーとも対等に話ができるそうだ。

まずは、日本食の人気が高まりつつあるアジア圏に販売をしていきたいという小林社長。

「私自身は、事業の将来について実は楽観的に見ています。100年前は、日本でピザやパスタを食べる人はほとんどいなかったはずですが、今ではごく身近な食品ですよね。それくらい食文化というのは変化しますし、これまでの100年とは比較にならないほど人の交流が進み、世界の食文化に触れる機会は増えています。日本食もアジア圏を中心にさらに広がっていくはずです。日本の食文化が海外の人々を愉しませ、より本格的な味が求められるようになったとき私たちの出番がやってきます。5年後、10年後に市場が開いたときのために、今から海外とのつながりを模索し、かつお節職人と削り節職人を守り、準備しておきたいです」

500年続く会社をつくって、日本の食文化を守り、海外に届けたいと熱く話される小林社長。その目は真っすぐ、遠く未来を見据えていた。


小林食品株式会社
https://www.kobayashi-foods.co.jp/company/

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岡島 梓/フリーライター

執筆者紹介文:

想いや考えを言葉で伝わる形にする、インタビュアー、ライター、リライター。
インタビューを中心とした記事の作成、キャッチコピーの開発、書籍の執筆・校正を通じ、伝えたいことを理解しやすく、表現に触れる方の心を損なわない形に再構築している。

早稲田大学第一文学部卒業後、東京地下鉄株式会社へ入社。人事業務に従事し、退職後ライターとしてのキャリアをスタート。近年は主に、地域で頑張る会社や事業、人々の魅力を伝え、求人や事業発展といった「はじまり」につながる記事を手がけている。

主な実績
・東京都・インキュベーションHUB推進プロジェクト
「イッサイガッサイ 東東京ものづくりHUB」記事執筆
https://eastside-goodside.tokyo/writer/50
・中小機構「TIP*S」キャッチコピー・理念等の文章化
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・江東ブランド2018 記事執筆(部分)
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