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  3. 2019.02.07

キラリと光る!中小企業(第14回)
髪より細い金属管が、便利な世の中を支える 日本特殊管製作所


スマートフォンやパソコンに搭載され、頭脳の役割を果たす「半導体(半導体でつくられた電子回路)」。便利な暮らしを支える半導体は家電や自動車にも使われているが、内蔵されているため、私たちが普段目にする機会はほとんどない。

そんな半導体の通電検査に使われる金属管「コンタクトプローブ用極細管」を製造しているのが、株式会社日本特殊管製作所だ。金属製パイプの製造販売会社として最小外径0.1mmという極細管の量産に成功し、多くの半導体検査メーカーと取引を重ねている。
今回は半導体をはじめとした製品を支える「見えないけど不可欠」な同社の金属管製造技術に注目したい。

時代に合わせ、高精度金属管を生み出してきた現場へ

1952年大阪府松原市で創設された日本特殊管製作所は、銅や銅合金、その他さまざまな金属で小径のパイプを製造する会社だ。
消火栓用ノズル管の生産からスタートし、1957年には冷蔵庫に使われる銅製のキャピラリーチューブの開発に着手。国内の生産台数の約半数が同社の製品を使っていたというほどの実績を残した。
さらに時代が進むと、先に紹介した「コンタクトプローブ用極細管」や、後述する医療用現場で使われる「ステント用特殊材料管」の製造にも着手し、常に時代ごとのニーズに応えてきた。

同社の金属管は「抽伸」という技法でつくられる。素材として仕入れた太い金属パイプが抽伸機にセットされ、細く長く伸ばされていく。
抽伸機だけでなく、管の外側を整える輪状のジグ「ダイス」、パイプの内面を滑らかにするための棒状のジグ「プラグ」など、工場に備わる機器類の多くが自社製。
抽伸された管は矯正機で真っすぐに整えられ、一部の製品では管の内側を適切に空気が流れるかチェックを行い、注文に応じて適切な長さにカットされる。切断後にコーティング等の加工を施すこともあり、綿密な品質検査を経て出荷される。

今回は、大阪営業部課長の井口 淳平氏、技術課課長の森 圭氏に工場を案内いただいた。
長年、同社の屋台骨となってきた銅管を製造する第1工場から、半導体検査に使う「コンタクトプローブ用極細管」を手がける第3工場まで見学させていただくと、工場ごとに雰囲気が一変することに気付く。
特に極細管を製造する第2・第3工場では繊細な作業を得意とする女性社員の数がぐっと増え、現場を見るだけで、お客様の求めに応じ、幅広い種類の金属管を生み出していることがわかる。

「当社と同じくらいの規模で細径の金属管をつくる会社は世界にもないはずです。創業70年間を遡ると、冷蔵庫やエアコン用の銅管が大量に必要とされた時代もありましたし、現在は、放電加工用や半導体検査用の極細管が主軸になりつつある。種類を絞らなかった分、安定経営を続けてこられたという側面はあると思います。先が読みづらい中でも、時代に追いつけ追い越せで技術開発に力を入れています」(井口課長、写真左)



「技術課には現在8名の社員がおり、それぞれにテーマを与えて日夜研究に励んでいます。過去には大学と共同研究を行って新製品の開発に活かすといった活動も行っており、次代の製品開発が我々の使命です」(森課長、写真右)



これまでも先端技術の調査・導入を進め、新技術の開発に資金を投じて世の中にない金属管を生み出してきた同社。新技術開発に向けたチャレンジを常に重ね、数年ごとに「スター製品」の開発に成功してきたことが生き残りの秘訣といえそうだ。

ライバルを置き去りにする加工技術のかけ算

同社の技術が最大限に発揮されるのは、極細管と呼ばれる金属管。その特徴は大きく3点に集約される。まずは、その細さ。同社が製造できる管の最小外径は0.05mm。
一般的な日本人の髪の直径が約0.08mmであることを考えると驚異的な細さであり、それがマカロニのように穴の開いたパイプだと思うと想像が難しいほどだ。

続く特徴は、薄肉であること。パイプ自体の厚みを薄くできるので、限界まで外径を小さくできる。先ほどの外径0.05mm管の場合、内径は0.02mmでパイプは0.015mmという厚みだ。
最後は、パイプの内面が滑らかで美しいこと。

「例えばコンタクトプローブという管の場合、管の中に入る複数の部品が滑らかに動かないと半導体の検査ができません。内面がガタガタだと、管の中で部品が引っかかってしまうのです。また、マスフローセンサーというガスの流量を調整するパイプも、内面の粗さが流量に影響します。管の内側を研磨する方法もあるのですが、費用がかなり高額です。当社のパイプは内面の研磨が要らないのでコストカットにもつながり、お客様に喜んでいただけるポイントのひとつとなっています」(井口課長)



いずれの特徴も高い技術を必要とするが、細く、薄く、かつ滑らかな管を製造できる会社は世界にもほとんどないという。さらに、同社の金属管への評価を高めているのが、徹底した品質管理と納期の順守だ。

「最終検査は人の目で行っています。この工程は一朝一夕とはいかず、複雑な製品を一人で素早く検査できるようになるまでには2年ほどかかることもあります。髪の毛より細い極細管は取り扱うだけで大変な製品。熟練スタッフがNGにした製品のどこがダメなのか、正直私にも判断できないほど繊細な世界です。納期に関しては、どんな製品でも3週間以内にお渡しできるようにしています。品質上の問題が起きたときには、社員がお客様のもとに駆け付ける体制ができていることもお客様に信頼いただいている要因だと思います」(製造部 宇高次長、写真)

知ってもらえれば、選ばれるという自信

海外からの発注は、ほとんどが高付加価値の極細管。特に、高品質なコンタクトプローブをつくるには当社の管を使わないと難しいと高く評価され、海外の半導体メーカーからの引き合いが増えているそうだ。

「当社の売上も年々海外比重が高まり、5割に近付いてきています。取引額は上から韓国、アメリカ、中国、タイ、台湾、ドイツの順です。アメリカやドイツは航空機エンジンメーカーから、アジア3か国では半導体検査器メーカーから受注があり、それがそのまま国ごとの有力産業を示しています」(総務部・経理部 樫山部長、写真)



3年前からAlibaba.comへの出展を開始し、昨年には、ベトナム、ドイツ、中国と海外の展示会へ出展している同社。自社製品を広く海外に知ってもらうきっかけになればと取り組んでいるそうだ。
直接目に見える完成品のメーカーではないからこそ、積極的に認知の機会を探っている。

先端分野への挑戦と地域貢献を軸に、三方よしの豊かな暮らしをつくる

海外との取引も増え、順調そのものに見える同社だが、製造業が直面するコスト増には悩まされている。今後の事業発展のためにも、高付加価値の製造・開発に力を入れる方針だ。

「半導体関連はもちろんですが、力を入れたいのは医療現場で活躍する製品の開発です。開発目標は、カテーテルの先に着けて血管を内側から拡げる金属部品「ステント用特殊材料管」。心筋梗塞や狭心症の治療に使われ、超弾性機能が必要とされます。当社では長年、加工が非常に難しいニッケルチタンという合金でつくろうと研究を続けてきて、やっと光が見えてきました。さらに研究を進め、現実的な価格で普及させることで医療の発展にも貢献できると思っています」(技術部 森課長)



また、地域活性化を意識しながら操業を続けていることも、同社の特筆すべきポイントだ。



「広い敷地には野球場やゴルフ、テニスの練習場などが設けられ、社員同士が交流を深めながら、健康的に働ける環境が整っています。週末になると、例えば野球グラウンドは地元の少年野球チームの練習場としても使われていたりして、地域住民の方々の生活の一部となっています」(井口課長)



春にはお花見、夏にはバーベキューと社内行事も活発に行われるなどアットホームな印象の同社。さらに、取材チームが工場見学をさせていただく間、職場で働く方全員が目を合わせて挨拶してくださったのがとても印象的だった。
感謝の思いが浸透する職場。そこから生み出される金属管が、世界をより便利に変えていく。

株式会社日本特殊管製作所
http://www.nittoku.com/

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岡島 梓/フリーライター

執筆者紹介文:

想いや考えを言葉で伝わる形にする、インタビュアー、ライター、リライター。
インタビューを中心とした記事の作成、キャッチコピーの開発、書籍の執筆・校正を通じ、伝えたいことを理解しやすく、表現に触れる方の心を損なわない形に再構築している。

早稲田大学第一文学部卒業後、東京地下鉄株式会社へ入社。人事業務に従事し、退職後ライターとしてのキャリアをスタート。近年は主に、地域で頑張る会社や事業、人々の魅力を伝え、求人や事業発展といった「はじまり」につながる記事を手がけている。

主な実績
・東京都・インキュベーションHUB推進プロジェクト
「イッサイガッサイ 東東京ものづくりHUB」記事執筆
https://eastside-goodside.tokyo/writer/50
・中小機構「TIP*S」キャッチコピー・理念等の文章化
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・江東ブランド2018 記事執筆(部分)
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