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  3. 2017.09.01

従業員30人の町工場が宇宙へ!倒産の危機からV字回復を果たした戦略とは


下請けの町工場として電気・電子関連のネジ作りをしていた小さな町工場が、業務改革を行いながら、JAXAやフランス航空機メーカーと取引を行うまでになった例を紹介します。
売り上げは10年で2.5倍。倒産の危機からV字回復を果たした、株式会社由紀精密の成功のポイントを見ていきましょう。

下請け町工場から欧米諸国も認める高付加価値企業へ

1950年創業の株式会社由紀精密は、特定の大手企業からの下請け受注に依存する町工場でした。
製造するのは電気・電子関連の金属製ネジ。
バブル経済の破綻、その後のITバブルの崩壊に加え、樹脂製品の高性能化も相まって受注は激減し、倒産の危機に直面します。

そんな中、2006年に3代目社長となる大坪正人氏が入社し、数々の改革を行います。
自社の強みが「品質の高さ」であることに着目し、これを最大限に生かすための業務改革を断行しました。
それまで、少品種多量生産だった体制を多品種小ロット生産に切り替え、高付加価値を追求するよう大きく方向転換します。
また、それを実現するための生産管理システムの開発や新しい分野への挑戦も並行して実施しています。

その結果、取引先は航空・宇宙、医療、自動車分野へと広がり、売り上げは10年で2.5倍にV字回復します。
この功績が評価され、2012年には「中小企業IT経営力大賞 優秀賞」を受賞。
2014年には、「がんばる中小企業・小規模事業者300社」に選出され、経済産業大臣表彰を受けています。

2015年にはフランスのリヨンに現地法人を立ち上げ、ヨーロッパ市場の開拓にも注力。
これからのますますの発展が期待されている企業です。

ターニングポイントは新分野の開拓

成長のきっかけとなったポイントを詳しく見ていきましょう。最大のポイントとなっているのは、少品種多量生産から多品種少ロット生産に切り替えたことです。これが、受託生産を中心とした事業モデルからの脱却につながりました。

この方向転換には、「製造」「受託開発」「ユキ・ラボ」という3つの柱がありました。同社がこれまで培ってきた精密切削加工技術は、非常に高いレベルのものです。これに加え、高品質・短納期を実現するため、自社で生産管理システムを構築し、取引先の満足度の向上につなげています。

また、顧客の仕様書や構想図を基に、設計から製造までを行える受託開発体制を整えました。これにより、他では実現できない特殊な機器の製造が可能となり、ロケットエンジンの推力を測定する実験装置等を受注するに至っています。

さらに、製品の企画から販売までを支援する事業「ユキ・ラボ」を立ち上げ、アイデアを有しながらも製品化する手段を持たない事業者をサポートし、共に商品展開を行うことを可能にしました。

これらの取り組みにより、オリジナリティの高い製品の企画・製造を実現し、安易な価格競争に巻き込まれない事業展開を行える地位を獲得したのです。

成長につながった3つのポイント

由紀精密の成功を支えたポイントを紹介します。

●CIによるブランド化に成功
大坪社長は入社してすぐ、取引先にアンケートを実施しています。
客観的な視点を取り入れながら自社の強みを洗い出し、それを外部の関係者に伝えるべく、ロゴやHPデザインなどを刷新しました。
これは、提案力・設計力・考える頭脳を持った町工場というブランド化のための施策でした。
また、HPリニューアルに伴い、SEO対策のためのサテライトサイトを立ち上げるなど、発注の機会を逃さない工夫もしています。


●営業を置かないスタイルを貫く
同社の強みは高度な技術です。営業担当者に任せるのではなく、技術者が顧客と直接対話することで信頼を獲得し、大手との差別化に成功しています。
精密機器は、一度信頼を得ることで長く取引が続く可能性が高く、この手法が大きな役割を果たします。


●海外展示会に積極的に参加
高付加価値製品を扱うブランドを意識し、あえてアジア戦略を考えず、欧米展開を視野に入れた戦略を展開しました。
パリ航空ショーなどへの出展や、欧米の展示会に積極的に参加し、高い技術力や生産体制をPRすることで、欧米の顧客獲得の実績を上げています。

小さな企業ならではの強みを発揮

同社の成功要因は、「できるはずがない」という思い込みを捨て、新たな道を探したことに端を発します。
そこで働く技術者自身がワクワクできる挑戦を続けることは、優秀な人材の確保にもつながり、高いモチベーションで仕事に取組みながら結果につなげることもできます。

小さな会社だからこそできる、ダイナミックな事業展開を図ったことが躍進につながった秀逸な事例といえるでしょう。

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