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  3. 2019.04.22

企業が独自で輸出管理体制をととのえるメリットとは?


前回は、不正輸出をしてしまったら、重い刑事罰や行政処分を受ける可能性があることをお伝えしました。

そのような事態にならないためには、やはり日頃からルールを守って輸出を行うことがとても大切です。今回は、不正輸出のリスクを避けるために構築すべき、企業の輸出管理体制について解説します。

輸出者等遵守基準に合った社内体制をととのえよう

輸出管理体制の話をする前に、まずは国で定められたルール「輸出者等遵守基準」について知っておきましょう。輸出者等遵守基準とは、輸出企業がリスト規制品などを輸出するときに守るべき基準のことです。では、具体的にどのような基準が定められているのでしょうか。

輸出者等遵守基準に定められた9か条を守るべし!

輸出者等遵守基準には、以下の9つのルールが定められています。まずは、この輸出者等遵守基準に合った社内体制づくりから始めましょう。

1. 

代表者(社長など)を輸出管理の責任者にすること

2. 

社内における輸出管理の役割分担を定めること

3. 

リスト規制などにあてはまるかどうかを確認する責任者をおき、確認手続きについても定めること

4. 

リスト規制品などを輸出・提供するにあたり、用途やユーザーの確認をする手続きを定め、その手続きにのっとって確認を行うこと

5. 

輸出時に、輸出しようとする規制品がリスト規制などにあてはまると確認した貨物と同じかどうか確認すること

6. 

輸出管理の監査手続きを定めて実施すること

7. 

規制を確認する責任者や輸出業務に携わるスタッフに必要な指導や研修をすること

8. 

関係文書をしかるべき期間保存すること

9. 

法令違反がもし見つかった場合、すみやかに経済産業大臣に報告し、再発防止策を講じること

基準を守るために社内で行うべきこととは?

基準の内容を理解したら、次は具体的にアクションを起こさなければなりません。基準を守るためにすべきこととは、大きく分けて「教育」「審査」「監査」の3つです。

全社員に輸出のルールを知ってもらうための教育をしよう

法令を守って適切に輸出業務を行うためには、社員がまず法令や規制について知っておくことが大前提です。そのため、社員には適切な教育を行わなければなりません。グループ企業の場合は、グループ傘下にある子会社・関連会社の社員にも同様に教育を行うことが必要です。

輸出許可の要・不要などの重要な判断をする輸出管理部門の責任者や役員には、規制にあてはまる自社製品や規制にあてはまるかどうかの判定方法、判定に必要な資料の探し方など、よりハイレベルな知識を身につけてもらうための専門的な研修を行うべきでしょう。一方、輸出業務にはあまりかかわりのない社員にも、輸出管理の基本的な仕組みやルールについて知ってもらうための教育をしたほうがよいと考えられます。

輸出時にはしっかり取引審査を

基準を守って輸出をするためには、前回の記事でも解説した取引審査が必要です。取引をしてもよい相手かどうか、エンドユーザーはどこのだれか、自社製品がどのようなルートをたどってエンドユーザーまでたどり着くのかなどをしっかり確認しましょう。同時に、リスト規制・キャッチオール規制(以下「リスト規制など」)に当てはまるかどうか、輸出許可が必要かどうかのチェックも忘れずに行います。

実務担当者が問題なしと判断しても、面倒でも輸出管理部門でもう一度確認するようにします。実務担当者と輸出管理担当者がダブルチェックすることで、不正輸出のリスクを減らせるでしょう。

監査をして輸出が適正に行われているかチェック

日頃から適切に輸出業務ができていると思っても、何らかの抜け漏れがあるかもしれません。そのため、輸出が法令や社内規程にのっとって行われているかどうか、チェックすることが大切です。

監査は、輸出管理体制やパラメーターシート(リスト規制などに当てはまるかどうかを判定した文書)、許可申請など、さまざまな項目について行います。監査が終わったら報告書をつくり、組織の代表者に提出します。もし、監査の中で改善すべきところが見つかったら、改善策を講じるようにしましょう。

輸出管理内部規程(CP)をつくろう

社内の輸出管理体制が整っていること自体、外部へのアピール材料になりますが、より信頼度がアップして、ビジネス相手から安心して取引をしてもらえる方法があります。それが、輸出管理内部規程(CP)をつくることです。

輸出管理内部規程(CP)とは

輸出管理内部規程(以下「CP」)とは、輸出法令を守って違反を防ぐために定められる社内ルールのことを言います。リスト規制などに当てはまるかどうかの判定や取引審査、教育訓練、内部監査などが定められています。

CPは、自主的に輸出管理を行うために、あくまでも任意で設けるものです。しかし、昨今はコンプライアンス意識の高まりにより、大手を中心にCPを作成する企業が増えています。経済産業省のデータによれば、届出事業者数は2014年時点で1451社にものぼります。

輸出管理内部規程(CP)を設けるとさまざまな効果がある

CPを設けることで、さまざまな効果があります。ひとつは、輸出管理について体系的な行動規範を持っておくことで、責任体制や行うべき手続きがはっきりわかることです。

一連の手続きを明記すれば、関係部門のスタッフが次にとるべきアクションを把握でき、抜けもれや法令解釈のミスも防ぐことができます。また、そうすることで不正輸出による処分を受けるリスクも低下します。さらにCPを設けていることを自社サイト上や会社紹介などでアピールすれば、世間からの信用度・信頼度もぐっと上がるでしょう。

輸出管理内部規程(CP)の届出を行うメリット・デメリット

CPには、経済産業省への届出制度があります。届出自体も任意ではありますが、内容が適切であると判断されれば、CP受理票を発行されます。また、希望すれば経済産業省のウェブサイトに社名を公表してもらうことも可能です。届出にはたくさんのメリットがありますが、一方でデメリットもありますので、よく比較検討して届出をするかどうかを決めましょう。

<メリット>
● 一般包括許可以外の包括許可が受けられる
● 自主管理体制が徹底している企業としてPRできる
● 安全保障貿易管理制度の更新や法改正などの情報がメール配信される

<デメリット>
● 監査や研修、文書保存を必ずしなければならなくなる
● 包括許可を受けた場合は立入検査がある

立入検査の実施

先述のとおり、CPを経済産業省に届け出たときは、適正に輸出管理ができているかどうかを確認するために、検査官による立入検査が行われます。実際に、輸出企業のうち、毎年100社以上が実際に検査を受けています。検査完了後は、必要に応じて改善指導や助言がなされますが、検査ではどのような点が指摘されやすいのでしょうか。

立入検査で指摘されやすいこと①取引審査

取引審査では、以下のような指摘が行われています。

<事例①>
同じ顧客・用途・貨物の継続取引で、CPで定められた取引審査を簡略化して輸出していたことが判明。
→継続取引で審査を簡略化するときは、どれくらい簡略化できるのかをCPで定め、定期的に見直しを行うよう指導された。

<事例②>
ある取引で、CPでのルールとは異なる最終判断権者の承認のもと、取引審査をしていた。
→最終判断権者を委任する際には、CPで権限を委任できる範囲を明確にするよう指導された。

立入検査で指摘されやすいこと②該非判定

また、リスト規制やキャッチオール規制にあたるかどうかの該非判定でも、検査官からの指摘が多く見られます。

<事例①>
法令の改正があったのに、改正前のリストを使って判定をしていた。
→法令改正があったときは、その都度最新のリストに基づいて判定をするよう指導。

<事例②>
非ホワイト国を含む仕向地への輸出ができる特別一般包括許可制度の対象となる貨物について、きちんと判定せず「非該当」として輸出していた。
→確実に取引審査やリスト規制などにあてはまるか判定をすること、あてはまる場合は包括許可が使えるかどうかも事前に確認することを指導。

立入検査で指摘されやすいこと③出荷管理など

その他にも、指摘されやすいこととして、出荷管理に関することがあげられます。

<事例①>
一般社員には輸出管理に関する教育を行っていたが、役員には教育をしていなかった。
→役員にも教育を実施するよう指導。

監査が行われていない部署・期間があった。責任者への報告も行われていない。
→監査は対象となる部署には定期的にすること、監査結果は代表取締役など最高責任者へ報告することを指導。


全4回にわたり、日本における輸出規制、取引審査、不正輸出の事例、社内管理体制の構築について解説してきました。輸出法令はほとんどの方にとってあまりなじみのないものですが、よくわからないからと言って規制に引っかかるかどうか調べないまま輸出してしまうと、後でとんでもないことになりかねません。少しでも不安や疑問点があれば、経済産業省など専門機関に相談するようにしましょう。

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あさきみえ

執筆者紹介文:

大阪府枚方市出身。立命館大学法学部卒業。
学生時代は国際法や国際政治学を中心に学ぶ。

卒業後は、NVOCC(自らは国際輸送手段を持たない貨物利用運送事業者)にて、通関書類の作成や港にある倉庫とのスケジュール調整、D/Rのチェック、原産地証明書をはじめとする各種証明書や海上保険の手配、船会社との海上運賃交渉など、輸出業務全般に従事。途中、主要取引先だった大手専門商社の海外事業部で駐在員として勤務した経験も持つ。

その後いくつか事務職を経てライターとして独立。現在、貿易・ビジネス・法律・経営などの分野を中心に、今まで執筆してきた記事数は1000本以上。記事の企画の立案から執筆・校正まで、幅広く手掛けている。

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