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  2. 2019.06.26

日本の製造業が目指す『コネクテッド・インダストリーズ』とは?


ものづくりに携わる皆さんは「コネクテッド・インダストリーズ(Connected Industries)」という言葉を聞いたことはありますでしょうか。
耳慣れない単語ではありますが、実は2017年から登場している言葉です。

コネクテッド・インダストリーズとは、日本のものづくり企業が取り組むべき方向性として、2017年3月に日本政府が打ち出したコンセプトであり、「データを介して、機械、 技術、人など様々なものがつながる(コネクテッド)ことで、新たな付加価値創出と社会課題の解決を目指す産業のあり方」を指しています。

モノとモノ同士がつながる「IoT(Internet of Things、モノのインターネット)」も、このコネクテッド・インダストリーズの考え方の一つといえます。

コネクテッド・インダストリーズの3つの柱

コネクテッド・インダストリーズには、基本的な考え方となる「3つの柱」があります。

《3つの柱》
1. 人と機械・システムが対立するのではなく、協調する新しいデジタル社会の実現
2. 協力と協働を通じた課題解決
3. 人間中心の考えを貫き、デジタル技術の進展に即した人材育成の積極推進

「3つの柱」の1点目では、AIやロボットといった新技術は、人間の仕事を奪う敵ではなく、課題解決のためのツールであり、人間の力を引き出すために、これら技術を積極的に活用すべきだということが述べられています。

2点目では、将来、地域や世界に起きる複雑な問題については、企業間・産業間・国家間が繋がり、連携してこそ解決することができるということが述べられています。

3点目は、データを活用するためのスキルを持つ人材を育成していくことの必要性が述べられているものです。ものづくりとAI、IoTを組み合わせることのできるスキルを持った人材の育成とともに、これら人材が活躍できる環境の実現が必要であると述べられています。

コネクテッド・インダストリーズが目指すもの

さて、この「3つの柱」の基本的な考え方を踏まえ、コネクテッド・インダストリーズが目指す、「つながり」を活かした付加価値創出や社会課題の解決とは、どのようなものなのでしょうか。
コネクテッド・インダストリーズのコンセプト(※)において、例として挙げられているものを見てみましょう。

・ モノとモノがつながる(IoT)
・ 人と機械・システムが協働・共創する
・ 国境を越えて企業と企業がつながる
・ 世代を超えて人と人がつながり、技能や知恵を継承する
・ 生産者と消費者がつながり、ものづくりだけでなく社会課題の解決を図る

コネクテッド・インダストリーズの考え方では、「モノ同士(IoT)」だけでなく人・機械・システム・技術とのつながりを包含していることが分かります。
また、「人同士」のつながりも世代間、生産者-消費者間、企業間といった多様なつながりを想定していることが特徴です。

いずれの「つながり」においても鍵となるのは、データの活用です。
例えば「製造業で働く人と機械・システム」のつながりにおいては、製造工程におけるデータの分析・活用により、製造品質を高めることや、生産性の向上、技術革新を実現することが期待されています。

「世代間の人のつながり」においては、これまで暗黙知であった製造技術を定量化・データ化することができれば、技能承継が行いやすくなり、若手人材育成のスピードアップにつながります。製造業における人手不足の解消に一役買ってくれるでしょう。

「生産者-消費者間のつながり」で消費者からフィードバックを定性的・定量的なデータとして分析・活用することができれば、サービス品質の向上に繋がることはもちろん、消費者ニーズの分析に基づいた製品開発・改良も行いやすくなるでしょう。

このように、データ活用を通じ、製造業の産業競争力を強化させることが「コネクテッド・インダストリーズ」の目指す姿なのです。


【注記】
※ 経済産業省ニュースリリース 平成29年3月20日(月)より一部を抜粋

 

コネクテッド・インダストリーズの推進状況

2019年6月に公表された、2019年度版の「ものづくり白書」においても、コネクテッド・インダストリーズについて継続的に取り組むことが記されています。

「ものづくり白書」は、別名を製造基盤白書ともいい、毎年、政府がものづくり基盤技術の振興に関する調査データや、将来の展望などをまとめて公表している報告書です。製造業に携わる方にとっては、日本のものづくりに関わるトレンドや、国の指針を把握する上で役立つ資料といえます。

第四次産業革命の進展に伴い、AIやロボット、IoTなどの技術が徐々に社会に浸透していくなか、日本の製造業も、これらの技術を活用しデータ活用に取り組んできました。

課題はデータ活用のためのインフラ整備


(図1)「Connected Industriesによる『勝ち筋』」

(出典:経済産業省 広報誌『METI Journal』資料)https://meti-journal.jp/p/2/

日本のものづくり企業は、長年、製造現場にデータを多く蓄積してきました。これは他国に比べて大きな強みになりえるものです。

しかし従来、蓄積されたデータは各企業や現場内で各個に管理されてきたため、「産業間」「企業間」「事業所間」を横断してのデータ活用は難しい状況にありました。

今後、コネクテッド・インダストリーズの実現に向けては、現場に埋もれたデータを掘り起こし、企業内の「事業所間」だけではなく「産業間」「企業間」やでつながりながら、戦略的に活用することが必要となります。

ここで課題となるのが、データ活用を推進するための環境です。

例えば、データを企業間で共有する場合、どのような範囲のデータを、どのような目的のために共有するのかといった「データの利用権限の範囲」について取り決めがないままデータ共有を行っては、企業間のトラブルになりかねません。

また、現状ではデータ共有のフォーマットも統一されていません。どのような様式でデータ共有を進めていくのか、標準化が課題となっています。

コネクテッド・インダストリーズを実現するための支援や制度

前段で述べた、コネクテッド・インダストリーズ推進に際しての課題を解決するために、経済産業省からは、データ活用のためのインフラ・環境の整備をはじめとした、さまざまなサポートが行われています。

まず、データの利用権限が明確となっていないがために、企業間でのデータ流通が進まない、という課題を解決するため、2018年6月に「AI・データの利用に関する契約ガイドライン」が発表されました。企業間の取引に関連して創出・取得・収集されるデータの利用権限を、契約によって適正・公平に定めるための考え方が整理されています。
https://www.meti.go.jp/press/2018/06/20180615001/20180615001.html

また、税制面でも、2018年6月より「コネクテッド・インダストリーズ税制(IoT税制)」が設けられました。この制度は、一定のサイバーセキュリティ対策が講じた上で、データ連携・活用を通じて生産性を向上させる取り組みについて、必要となるシステム、センサー、ロボット等の導入を支援する税制措置となっています。

さらに、2019年4月からは、認定を受けた中小企業等は、「コネクテッド・インダストリーズ税制」で認定された設備投資について、日本政策金融公庫から特別利率での貸付を受けられるようになりました。

データの共有・連携のためのIoT投資の減税等に関する制度については、経済産業省「生産性向上特別措置法及び産業競争力強化法等の一部を改正する法律」のWEBサイトからも、企業規模や支援策別に検索が可能となっています。
https://www.meti.go.jp/policy/jigyou_saisei/seisanseisochihoukyoukahou/

ここまで、日本の製造業を取り巻く潮流のひとつである「コネクテッド・インダストリーズ」について説明してまいりました。

みなさまの身の回りにも、取引先企業や同業他社、消費者との「つながり」や、データ活用によって解決できる課題がありませんでしょうか。
もし思い当たる課題があるならば、「ものづくり白書」の企業事例集をご一読いただき、支援制度を活用した投資を検討してみてはいかがでしょうか。

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狩野 詔子/株式会社プロデューサー・ハウス

執筆者紹介文:

株式会社プロデューサー・ハウス ライター、コンサルタント
大阪府中小企業診断協会 観光・サービス経営研究会 代表
サービス業・観光業における生産性向上を専門とするコンサルタント。
ヤマハ株式会社、デロイトトーマツコンサルティング合同会社にて、製造業の国内外拠点における業務改善プロジェクトに多数参画。
現在はテーマパーク運営企業にて飲食部門・バックオフィス等の業務効率化を手掛ける。

共著「一人ひとりの『働き方改革』講座」(日本マンパワー株式会社)
執筆記事「サービス業で使える!生産性を上げる『カイゼン』テクニック5選」、
「サービス業のマーケティング入門!自社の『7P』を把握しよう」
(中小企業庁ポータルサイト「ミラサポ」)ほか多数。

お問い合わせ先
株式会社プロデューサー・ハウス
Web:http://producer-house.co.jp/
Mail:info@producer-house.co.jp

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