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  3. 2019.07.09

中小企業こそ健康経営に取り組むべき!失敗しないススメ方教えます


従業員の健康を重要な経営資源であると捉え、経営戦略として健康促進を実践していく取り組みである「健康経営」をご存知でしょうか? 

健康経営は、従業員のパフォーマンスを向上し生産性を上げるほか、「従業員を大切にしている会社」として認知度があがると、企業ブランドの向上につながります。

平成31年2月21日付で発表された「健康経営優良法人2019」の中小規模法人部門では、日本健康会議より2502法人が認定され、中小企業においても健康経営の認知度は向上しつつあります。 

しかし、中小企業の経営者とお話をしていると、「健康経営が大事だと認識はしているが、お金も時間もないから、なかなか始められない」という声も伺います。

中小企業が健康経営に取り組むうえでは、経営トップからゴールを明確にし、社内にある資源を生かして、まず「第一歩を踏み出してみる」ことが重要です。

健康経営が中小企業に必要な理由

なぜ健康経営が今注目を浴びているのか、社会的背景から考えてみましょう。

(1)生産年齢人口の減少

(出所:中小企業庁編「2018年版中小企業白書」)

生産年齢人口とは、15歳から64歳の人数です。日本の生産年齢人口は1995年の約8,700万人がピークで、2015年には約7,700万人まで減少しており、2060年には約4,800万人まで減少すると予想されています。

支援先の企業にお伺いすると「従業員が採用できない」というご意見をよく伺います。データに示されるまでもなく、人手不足については実感されている経営者の方も多いのではないでしょうか。

(2)生活習慣病は日本人の死因の約3割

(出所:厚生労働省「平成28年人口動態統計月報年(概数)概況」
図5「主な死因別死亡数の割合(平成28年)」)
(出所:厚生労働省「平成28年人口動態統計月報年(概数)概況」
図6「主な死因別にみた死亡率(人口 10 万対)の年次推移」)

生活習慣に起因する心疾患や脳血管疾患による死因は、日本人の死因の約3割を占めています。死亡率の年次推移についても、平成7年から増加傾向にあることがわかります。働き盛りの従業員がこのような病にかからないためには、日頃の生活習慣を整えることが必要です。

(3)プレゼンティーズムコストの削減

「プレゼンティーズムコスト」とは、「出勤したものの体調が優れず、生産性が低下している状態」の労働損失のことを指します。原因としては、慢性疲労、うつ病、腰痛、頭痛、花粉症等です。

体調が優れないとき、仕事の効率が落ちていることは誰もが経験したことがあるでしょう。企業側から見れば、支払っている賃金に見合ったパフォーマンスを従業員が発揮しておらず、生産性が下がっているといえます。従業員が1人でもそのような状態に陥っていることは、経営者にとって好ましいことではないはずです。

(4)人的資源に限りがある中小企業は、労働力の維持・確保がミッション

中小企業にとって、従業員が病気等の理由で一人でも抜けることは大きなダメージです。
健康経営に取り組むことは、企業の生産性向上や企業ブランドのイメージアップにつながり、合わせて事故・不祥事を防止するリスクマネジメントになるのです。

経営資源の土台が「人」である中小企業こそ、社員の健康促進を経営戦略に取り入れることで、労働力の維持・確保を図ることが必要です。

健康経営成功のカギは、経営戦略の進め方と同じ

健康経営を成功させるためにはどのように進めればよいのでしょうか。

明確な目的がなく「禁煙の促進のために灰皿を撤去する」ことや「残業禁止」など、手段を実行するだけでは、従業員からの理解が得られず失敗に終わります。

健康経営に取り組むうえでは、企業の経営戦略を進めるプロセスと同様、PDCAサイクルを着実に実行することが重要です。

(1)現状分析

まず、健康経営の視点からみて、企業がどのような課題を抱えているかを分析します。健康診断の結果など、企業にすでにあるデータから検証を始めるとよいでしょう。従業員50人以上の職場であればストレスチェックも利用できます。

また、従業員の欠勤を分析することで、例えば「冬の時期に体調を崩す社員が多い」といった傾向もわかります。

営業や工場勤務といった、従業員の仕事内容によっても健康上の課題は異なります。業務実態にとった分析が必要です。

(2)ゴールを明確化とトップからのメッセージ

分析により整理された課題から、健康経営で目指すゴールを設定します。
健康経営に取り組むうえでは、経営トップからの強いメッセージが必要です。これがなければ、従業員は目先の仕事を優先し、健康に関する活動に対するインセンティブが働きません。「健康経営は我が社の経営課題である」という意思表示をしましょう。

(3)KPIの設定

ゴールを明確にした後は、そのゴールの達成を図るためのKPI(重要業績評価指標)を設定します。何をKPIに設定するかどうかは、設定したゴールによって変化します。数値を用いて、効果測定が明確にできるような指標を設定しましょう。

KPIの例としては、健康診断の指標、精密検査の受診率、欠勤率、有給休暇取得率、労働時間数などがあります。経済産業省が発行している『企業の「健康経営」ガイドブック~連携・協働による健康づくりのススメ~』 に詳しい解説がありますので、一度目を通してみることをお勧めします。

(4)組織体制づくりと施策の実行・振り返り

経営資源が限られる中小企業は、すぐに大きな投資を行うことはできません。まず組織体制を整え、コストをかけずに「今」からできる取り組みを実践することから始めましょう。

・健康づくり担当者を設置する
組織的な取り組みを進めるため、健康づくり担当者を設置します。従業員が少ない中小企業は、人事や総務担当の従業員が兼任することが多いかもしれません。しかし、働き方は仕事のやり方等によって大きく異なります。本社機能だけでなく、各事業所や事業課単位で設置することで、幅広い視点を取り入れることができます。

・社内の既存資源を生かす
健康経営を始めるにあたって、大規模な投資からスタートする必要はありません。設定したゴールとKPIをもとに、できることから始めましょう。

例えば、社員の健康管理に対する意識付けを図るため、医務室に設置していてほとんど使われていなかった血圧測定器を、食堂に設置しなおした中小企業があります。従業員がよく通る動線に配置することで、より多くの従業員が使うようになり、健康管理への動機づけが高まったそうです。

新たな投資を検討する前に、まずは企業の中にすでにある資源を活用することからはじめてみてはいかがでしょうか。

・検証の場を設ける
企業の経営戦略では、施策を実施すればその効果を必ず検証します。健康経営でも同様に、定期的にKPIの達成度を確認し、次にどのような施策を打つべきか、検証をしながらPDCAサイクルを回します。

ゴールを明確にすることが、健康経営成功のカギ

中小企業にとって、一人ひとりの従業員は代わりがきかない大切な経営資源です。健康経営に取り組むことは、リスクマネジメント面からも重要な視点であることがご理解いただけましたでしょうか。

企業の経営戦略と同様、ゴールがない健康経営の取り組みは失敗につながります。内部資源をうまく活用しながら、戦略的に健康経営を進めましょう。

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米澤 智子/株式会社プロデューサー・ハウス

執筆者紹介文:

株式会社プロデューサー・ハウス ライター、コンサルタント
1985年生まれ、神奈川県出身。

2009年地方銀行入行、債権管理および中小企業融資業務に従事した後、
総務部門で銀行全体の通信設備管理や株主総会運営に携わる。

2016年中小企業診断士登録。

2017年より公的機関に勤務、
専門家派遣事業において小売・サービス業を中心とした支援に携わる。

お問い合わせ先
株式会社プロデューサー・ハウス
Web:http://producer-house.co.jp/
Mail:info@producer-house.co.jp

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