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  3. 2018.06.20

【経営者必見】小さな会社のための”財務の教科書”(第1回)
中小企業の経営者が知らなければならない財務のポイント


1.はじめに

今回より4回にわたって、中小企業の財務のポイントについて書かせて頂く税理士法人古田土会計の代表社員古田土と申します。

古田土会計グループは社員220名、顧問先数約2,200社、平成29年度の売上高(粗利益)17億円、経常利益3.4億円、無借金で自己資本17億円、自己資本比率90%の中小企業です。自己資本額以上の金融資産を預金と保険金積立額で保有しています。創業36年目ですが、35期連続増収で赤字は1度もありません。

古田土会計は、古田土式月次決算書と経営計画書で日本中の中小企業を元気にするという使命感のもとに、中小企業にお金の儲け方とお金の残し方を指導する会計事務所です。

2.財務とは

財務について書くにあたり、まず財務とは何かを定義しなければなりません。

私達古田土会計では、財務とは「預金>借入金でこの差を大きくすること」と定義しています。企業活動は、財務が目的で損益は手段です。会社が成長して利益を出すのは、財務体質をよくする手段の1つです。会社は赤字だから倒産するのではなく、お金がなくなるから倒産するからです。

理想の財務体質は、「無借金で預金が多いこと」ですから、貸借対照表の左側の科目は、預金以外はゼロがよいのです。現実的には、受取手形、売掛金、棚卸資産等の科目がありますが、これらの科目の金額が少なければ少ないほど経営効率がよく、財務体質がよい会社です。


固定資産も少なければ少ないほどよく、「持たざる経営」が会社を強くします。そして貸借対照表(B/S)の右側の負債がゼロの会社は自己資本比率が100%になります。儲かっている会社でそんな会社はありえないと普通は思いますが、現実にあります。

世の中には財務体質のよい会社より悪い会社のほうが圧倒的に多いものですから、財務体質の悪い会社をいかにしてよい会社にしていくかについて説明していきます。

3.お金には色がついている

財務体質の悪い会社は、いつも資金繰りで苦しんでいます。数字に弱い経営者は支払うべきお金の順序が間違っているために、銀行への元金返済を優先し、資金不足により倒産しています。経営危機の緊急時にはお金に色をつけて、その支払いのための「順位」があります。

すなわち、資金が足りないときに、一番最初にやるべきことは、銀行への「元金」の返済をストップすることです。一般的には、「リ・スケジュール」と言われています。銀行がお金を貸してくれるうちは返済する。銀行が貸してくれなくなったら、即返済しないことが一番の資金繰り対策です。「貸し渋り」に対して「返し渋り」が正しい対策です。


「限られた資金」になった場合、この順序で支払いをしていきましょう。

①手形の支払い
支払いが滞れば不渡りになり、倒産です。1円の不足も許されません。不足する見込みになったら、手形をジャンプしてもらう、長期の分割にしてもらうようにお願いをしましょう。

②従業員への給与
給与の10%~30%を一時的に社員に待ってもらえないでしょうか。
残りの資金を作って、速やかに支払ってください。

③材料代
材料費の50%とか1ヶ月くらいは仕入先に待ってもらいましょう。
しかし在庫処分、売掛金の回収後は早急に支払いをすべきです。仕入先が小規模だと先に倒産してしまうからです。

④会社を維持するための諸経費
電気・ガス・水道等の公共料金は1ヶ月~3ヶ月は大丈夫だと思います。待ってくれます。

⑤銀行への「金利」
金利は一部だけでも支払うべき。金利まですべて止めると銀行からの格付分類が大幅に下がります。

⑥税金・社会保険料
消費税、源泉税、住民税など滞納の総額が1,000万円までは交渉が可能です。
ただし差押え等の強制手段もあるので、分割払いも検討しましょう。

⑦銀行への「元金」の返済

4.借入金の返済原資は何か

ほとんどの中小企業では、借入金があります。年商10億円以上の会社で無借金の会社はほとんどありません。しかし、先ほど書いたように実在はします。多くの優良会社は実質無借金です。すなわち預金≧借入金の状態です。中小企業全体でみると預金<借入金の会社がほとんどです。

何故中小企業は借金過多の企業が多いのか、それは「儲かっていないから」と「お金のこと(財務)がわかっていないから」だと私は思っています。お金の儲け方は、損益計算書の経常利益や税引後利益を増やすことです。


しかし、儲かっていることとお金が残っていることとは全然違います。多くの経営者がこの違いがわかっていないため、いつまでたっても財務体質がよくなっていません。財務体質をよくするためには、お金の儲け方よりお金の残し方を学ぶことが大事なのです。

私は多くの人に「借入金の返済原資は何だと思いますか」と聞くと、だいたい3つの答えが返ってきます。1つめは売上、2つめは利益、3つめは税引後利益+減価償却費という答えです。

結論は3つとも違いますが、まず売上と答えた人は資金繰りの苦しい人ではないかと思います。

売上増加で借金を返済する会社はたぶん手形を受け取り、割引をしているので、ほぼ自転車操業に近く、いつ潰れてもおかしくない会社です。また利益ではなく、売上を見ているので売上を確保するために安価で販売し、赤字になっているケースが多いのです。

利益と答えられた会社は健全です。会社は何のために借金をするのか、結論は利益を出すためだからです。会社は借金をして設備投資をする、在庫投資、人材投資をする、海外進出をする、これらの行為をするのは利益を出すためだからです。では何のために会社は利益を出すのか、それは働いてくれている社員と家族を守り、幸せにするためです。

3つめの税引後利益+減価償却費と答えられた方は、銀行員か経理をよく勉強されている方です。銀行は返済能力を見るときにこの数字を参考にします。一般的には借入金をこの数字で割って、債務償還年数を計算し、10年を目安にして融資の判断基準としています。

5.経営者はお金と利益の違いを知らなければならない

私が何故売上や利益や税引後利益+減価償却費ではないと言ったかと言うと、借入金を返済するのはお金だからです。3つとも損益計算書だから違うのです。利益とお金の違いがわかっていないから、儲かっていればお金が残っていると勘違いしているのです。

多くの人が借入金の返済原資が利益だと思っているために、利益を増やすために売上の拡大を目指します。売上が拡大して利益は増加するかもしれません。

しかし、お金はどうなっているのでしょうか?

売掛金、受取手形、棚卸資産の増加>支払手形、買掛金の増加により資金不足になります。設備投資、人材投資をしていればそれらの資金も必要です。

また、多くの中小企業の経営者はお金を儲けても税金を払いたくないものですから、銀行に対して決算書をよく見せるために、営業利益や経常利益を多くしても特別損失の部で、多額の保険料や特別償却費、さらにはレバレッジリース等による節税をして税引後利益を少なくします。いつもでたっても自己資本比率が低く財務体質はよくなりません。

損益計算書(P/L)の減価償却費や利益で借金を返済すると思うから、財務体質がいつまでもよくならないのです。借入金は、B/Sの科目で返済するのが正しいのです。

実は損益計算書(P/L)の減価償却費や利益は貸借対照表(B/S)にもあります。B/Sでは減価償却費は減価償却累計額として有形固定資産のマイナス科目としてあり、当期利益は純資産の部に科目としてあります。

つまり、借入金返済額(B/S)=減価償却累計額(B/S)+当期純利益(B/S)なのです。

減価償却累計額や当期純利益が増えることによってお金が増え、お金で借入金を返済するのです。

6.財務体質の改善とは

財務から見た経営の究極の目的は、資金を増やすことです。資金の蓄積とは、借入金残高が減り、現預金が増えることです。すなわち、財務体質をよくすることとは、預金>借入金でこの差額を大きくすることです。

売上も利益も手段の1つです。資金は、会社存続という面から見れば、損益に優先します。ただし、会社は赤字が続くと資金は必ず不足します。資金を蓄積する大前提は利益であることを忘れてはなりません。


財務体質を改善するポイントは、P/LではなくB/Sにあります。常に預金>借入であれば、会社は儲けなくても、成長しなくても財務体質はよくなります。無借金の会社にもできます。

具体的にどのようにやるかは次回以降に書きますが、とにかく、B/Sの左側の資産科目を可能な限り圧縮します。減らした額は、預金が増えるか、借入金が減るので財務体質は改善します。

理想的なB/Sの左側(資産)のイメージは流動資産が多く、固定資産が少ない逆三角形型。右側(負債)は、流動負債は少なく、固定負債を多くするピラミッド型です。

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古田土 満(こだと みつる) /税理士法人古田土会計 代表社員

執筆者紹介文:

1952年生まれ
1976年3月 法政大学経営学部卒
公認会計士・税理士
税理士法人古田土会計代表社員
日本で一番大切にしたい会社大賞 審査委員
中小企業庁 はばたく中小企業300社 審査委員
茨城県那珂市ふるさと大使

監査法人を経て、昭和58年1月独立。現在220名の税理士法人古田土会計の代表社員。
開業以来35年連続増収で赤字は一度もなく、営業なしの口コミだけで年間150件以上の新規開拓を続けている。
税理士業界では注目の会計士で、商工会議所、銀行等各種団体の講演多数。
また全国の同業者である公認会計士、税理士にも経営の手法も指導している。


主な著書
・ 『社員100人までの会社の「社長の仕事」』  かんき出版 2015年
・ 『経営計画は利益を最初に決めなさい!』  あさ出版 2017年
・ 『ダントツ人気の会計士が社長に伝えたい 小さな会社の財務コレだけ!』  日経BP社 2017年


問い合わせ先 Email : info@kodato.com
TEL  : 03-3675-4932
URL : https://www.kodato.com/

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