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  3. 2018.07.26

【経営者必見】小さな会社のための”財務の教科書”(第3回)
儲けた利益はどこに消えたか?中小企業のためのキャッシュフロー計算書


1. はじめに

さて、前回は儲けを出すためには粗利益率によって戦略を変えることが重要だと説明しました。
今回は「キャッシュフロー計算書を使ったお金の残し方」について触れていきます。

まず、キャッシュフロー計算書の話をする前に、財務三表のそれぞれの性質の違いを正しく知っておくことが大事です。改めてここでおさらいしましょう。
 
損益計算書(P/L)は一定期間の儲けを示すものです。
月ごとに時系列で項目毎の数字を比較することで、なぜ儲かっているのか、なぜ赤字になっているのか、といった原因がわかります。
 
一方、貸借対照表(B/S)はある時点での財務体質を示すものです。
月ごとに比較して見るものではなく、期首残高から現時点までの借方、貸方の累計の数字を読むことで、財産の増減と残高がわかります。

どのようなP/LとB/Sが理想かは、第1回の最後に書きました。
財務体質はB/Sによって分析できますが、いくら自己資本比率等の財務体質がよくても過去の利益の蓄積である純資産(B/S)がお金で残っているとは限りません。むしろ儲かっていてもお金の残っていない会社が多いです。

キャッシュフロー計算書(C/F)は利益と残っている資金の違いがわかります。
損益計算書(P/L)上では当期利益として1,000万円が計上されていても、キャッシュが1,000万円増えているとは限りません。

そこで今回は、P/Lの一定期間の儲けた利益がどこに消えたかをわかりやすく説明する道具として有効な、キャッシュフロー計算書(C/F)を説明します。

2. キャッシュフロー計算書(C/F)

 C/Fは下記の3つから構成されています。
①    営業活動によるキャッシュフロー
②    投資活動によるキャッシュフロー
③    財務活動によるキャッシュフロー

①+②がフリーキャッシュフロー(純現金収支)と呼ばれ、この金額が「キャッシュフロー上の利益」です。
左上の当期純利益が「会計上の利益」ですから、C/Fは利益とお金(キャッシュ)の違いを経営者に教えてくれるものです。
いくら会計上の当期純利益が多くても、キャッシュフローとしてお金が残っていなければ、借入金の返済ができないばかりか、資金不足により借入金を増やさなければなりません。

キャッシュフローを理解することは「お金の残し方」を学ぶことです。なぜそれを理解しなければいけないのか、順に見ていきましょう。

(1)なぜ毎月キャッシュフロー計算書をつくるのか

中小企業のほとんどの会社が借金をしています。ではなぜ会社は借金するのでしょうか。
売上を上げるため、設備投資をするため、人を採用するため、在庫を増やすため等、いろいろな理由が考えられます。

しかし、これらの目的はたった一つ「利益を出すため」です。
売上を増やすのも、設備投資をするのも、在庫を増やすのも全て利益を出すためです。
会社は利益を出すために借金をして、利益の中から借入金を返済していくわけです。
ですから、借入金の本質は利益の前倒しであると定義できます。

仮に、税引後利益-配当金+減価償却費<借入金返済額
とすると、その会社は約定の借入金を返済できなくなります。
実際には多くの会社でこのような状態なのですが、銀行が不足額を貸してくれているのでお金が回っているだけです。

 ここまでは長期の借入金返済の話です。短期の借入金返済では違います。
借入金の返済原資は、利益でも減価償却費でもありません。
お金(キャッシュ)です。
貸借対照表上では、(借方)借入金/(貸方)預金という仕訳になります。

損益計算書の税引後利益は、実際に会社に残っている金額ではありません。
損益とお金(キャッシュ)は別物です。
中小企業の経営者は数字に弱い方が多いので、儲かっている、つまり税引き後利益が出ていると、会社にお金が残っているように錯覚してしまいます。これは間違いです。

例えば、売上が増加して損益計算書上で利益が1,000万円増えても、売掛金が800万円、棚卸資産が700万円増加したら資金は500万円減少しているのです。
さらに決算2ヶ月後には税金400万円を払うために合計で900万円の資金が減少する計算になります。

そこで古田土会計では、お客様に「儲けた利益がどこへ消えたか」を説明するために、独自のC/Fを作り毎月説明しています。

(2) 儲けた利益がどこに消えたか。キャッシュフロー計算書の事例で学ぶ

古田土会計のキャッシュフロー計算書は、中小企業の経営者・幹部の方に「儲けた利益がどこに消えたか」を教えてくれるものです。
数字に弱い方は一年に一度の説明では忘れてしまうし手遅れになるので、毎月説明して資金対策を打つことにより数字に強い経営者になってもらい、手元資金中心のキャッシュフロー経営をしてもらうようにしています。 

キャッシュフロー計算書の「営業活動によるキャッシュフロー」にある当期純利益5,490万円は、損益計算書の税引後利益と同額になります。この数字が会計上の利益です。

そして、キャッシュフロー上の利益とは、フリーキャッシュフロー(380万円)のことを言います。
会社は、フリーキャッシュフローの金額で借入金の返済をするわけです。

このことをわかりやすく表現するために、古田土会計のキャッシュフロー計算書では、当期純利益とフリーキャッシュフローを同じ高さにして、両者の金額の違いをわかりやすく表示しています。

また、数字の単位は百万円単位にして小数点第一位の10万円単位まで表示しています。
なぜ万円や千円単位ではないかといえば、経営者は百万円単位で借金をするケースが多いからです。わかりやすく、読みやすくしています。

「当期純利益」5,490万円がどうして380万円の「フリーキャッシュフロー」になったのか?

まず「減価償却費」の1,580万円はお金の出て行かない経費なので、キャッシュフローとしてはプラスの要素です。合わせて「純キャッシュへの調整額合計」は1,590万円のプラスです。

しかし、「受取手形と売掛金の増減」が3,350万円増加し、「棚卸資産の増減」が2,360万円増加しているのはマイナス要因です。「販売仕入活動による増減額合計」は3,480万円のマイナスとなります。

また、「その他資産負債の増減額合計」が1,880万円のマイナスになっています。

以上、3つのくくりを通算すると、「営業活動により調達した純キャッシュ」はプラス1,720万円になります。

次に、「投資活動に使用した純キャッシュ」が1,340万円のマイナスなので、「フリーキャッシュフロー」は、
1,720万円-1,340万円=380万円
となりました。

このままだと、長期借入金の約定返済金額が3,650万円なので3,270万円不足しています。
この不足額の一部を賄うために、割引手形と短期借入金で3,000万円が増えているわけです。

このように、長期借入金の返済原質を短期借入金や割引手形で調達したなら危険です。
長期借入金で調達するのが原則です。
短期で調達するのは、銀行に借り換えを拒否されたり、割引を拒否されたりして、あっという間に資金不足になり倒産してしまうからです。

それだけ、短期借入金や割引手形には危うさがあるわけです。会社の預金合計より短期借入金と割引手形の合計の方が多かったら、会社にお金(キャッシュ)はないものと考えなければなりません。

4.まとめ

以上のように、キャッシュフロー計算書は、利益とお金(キャッシュ)の違いをわかりやすく、項目別に経営者に教えてくれるものです。

経営者の方に特に気をつけて頂きたいのは、長期借入金の返済額です。
返済原資を利益だと考えてしまうと、借入金返済額が多い場合は多額の利益を出さなければならないということになります。

多額の利益を出すためには、大幅な売上増加が必要です。
売上を増やすには人件費・経費の増加、売上債権・棚卸資産の増加などが伴い、必要なキャッシュはかえって増えてしまいます。借入金返済どころか借入金が増えてしまいかねません。

つまり、売上増加とは異なる手を打つべきです。
貸借対照表の各種残高を意識的に変え、利益にかかる税金を払うことなくキャッシュを確保して長期借入金を返済し、減らしていければ、徐々に返済額が少なくなり、無理に利益を出す必要もなくなります。具体的な方法は第4回で解説します。

その結果、価格競争に巻き込まれることもなく、会社が存続しやすくなります。
売上拡大、利益拡大にこだわってしまいがちな損益計算書中心の経営ではなく、キャッシュフロー重視の貸借対照表中心の経営をしてください。
それが会社を潰さない方法になるのです。

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古田土 満(こだと みつる) /税理士法人古田土会計 代表社員

執筆者紹介文:

1952年生まれ
1976年3月 法政大学経営学部卒
公認会計士・税理士
税理士法人古田土会計代表社員
日本で一番大切にしたい会社大賞 審査委員
中小企業庁 はばたく中小企業300社 審査委員
茨城県那珂市ふるさと大使

監査法人を経て、昭和58年1月独立。現在220名の税理士法人古田土会計の代表社員。
開業以来35年連続増収で赤字は一度もなく、営業なしの口コミだけで年間150件以上の新規開拓を続けている。
税理士業界では注目の会計士で、商工会議所、銀行等各種団体の講演多数。
また全国の同業者である公認会計士、税理士にも経営の手法も指導している。


主な著書
・ 『社員100人までの会社の「社長の仕事」』  かんき出版 2015年
・ 『経営計画は利益を最初に決めなさい!』  あさ出版 2017年
・ 『ダントツ人気の会計士が社長に伝えたい 小さな会社の財務コレだけ!』  日経BP社 2017年


問い合わせ先 Email : info@kodato.com
TEL  : 03-3675-4932
URL : https://www.kodato.com/

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