- 組織・人事
- 2018.09.03
効率化できる?中小企業がリモートワークを導入する際に考えておきたいこと
はじめに
テレワークは経済産業省が掲げる2020年働き方改革の中に含まれる施策の一つ。
リモートワークとテレワークでは呼称が違いますが、その意味するところはほとんど同じであり、遠隔のオフィス以外で働く働き方を指しています。
実際に近年ではパナソニックやトヨタなど、大手企業も導入を決定して進めています。
今後働き方の一つとして定着することが予想されるリモートワーク。中小企業がこのリモートワークを取り入れるメリットにはどのようなことがあるのでしょうか。
本記事では、リモートワーク導入による業務の効率化と、実際のリモートワーク導入を決める前に考えておきたいことをまとめていきます。
1.クラウドサービスの導入と情報共有の方法について

リモートワークを導入する際に課題となるのは情報共有とセキュリティの問題です。
リモートワークはネットを使った文書の交換が前提となるため、セキュリティ対策が欠かせません。リモートワークする社員のパソコンにセキュリティを導入することは当然ですが、セキュリティ機能が充実したクラウドサービスを活用するという選択肢もあります。
チャットワークやGoogleドキュメントなど、閲覧が限定されたネットで文書を共有するサービスを使えば、スムーズな情報共有が可能となります。またそういったネットで情報を共有するクラウドサービスはセキュリティ対策も実施されている場合が少なくありません。送信ミスなどのリスクがあるメールで文書をやりとりするよりも、安全に業務を行える可能性があります。
2.デバイスと通信の課題
リモートワークを自社で導入するとなると、ノートパソコンなど業務で使うデバイスの調達も課題の一つです。リモートワークさせる社員の数が多ければ、セキュリティの導入を考えるとその予算は決して低いものではありません。そこで検討すべきことは、社員が個人所有しているノートパソコンなどデバイスの活用です。
リモートワークで必要となるデバイスは、必ずしも新しいものである必要はありません。
社員が個人所有しているタブレットやノートパソコンでも、セキュリティや運用ルールを固めておけば導入は可能です。実際に社員所有のノートパソコンで業務を行っている企業は少なくありません。
自社でデバイスを用意すれば、セキュリティとしてはより強固にすることができるのは確かなことです。しかし予算が限られている場合、セキュリティとコストは天秤で考えることも大切です。
3.リモートワークによって削減できるコストとは
中小企業がリモートワークを導入する場合、最も削減しやすいコストがあります。
それは営業職のコストです。営業職は取引先の場所が会社から離れている場合、往復するだけで半日程度の時間を費やしてしまうことは珍しいことではありません。
もし、出社もしくは帰社の必要が無くなれば、その時間をリモートワークの時間に充てることができます。
そして交通費など経費の削減にもつながります。web会議を導入すれば、営業担当が取引先から急いで自社に戻る必要がなくなり、移動コストも削減できます。
また事務職を増員する場合でも、最初からリモートワークを前提にしておけば、オフィスを拡大する必要がなくなります。事務所を賃貸で借りているなら、毎月の家賃を抑えることができるかもしれません。
このようなリモートワークの利点を理解しておけば、職種ごとに最適な働き方を決めることができます。実際に経理の補助などの事務業務をリモートの社員や、遠隔アルバイトが対応している企業は少なくありません。
4.優秀な人材の流出の歯止めにもなる

女性社員であれば、夫の転勤や妊娠・出産を理由に離職するケースも少なくありません。
リモートワークを導入していれば、優秀な人材流出の歯止めにもなります。
仮に女性社員が結婚を機に海外に転居したとしても、リモートワークを導入していれば、海外からでも業務は遂行することができます。
また妊娠や出産を理由に休職したとしても、リモートワークが導入されていれば復帰のハードルは低くなります。出社義務がなければ、子供を持つ女性でも快適に働ける可能性があるからです。
少子高齢化が進む日本では、労働人口の減少は今後も続くことが予想できます。そういった社会的背景からも、リモートワークの導入は検討すべき施策だといえるでしょう。
5.リモートワークの導入事例
ではここからは中小企業がリモートワークを導入している事例として、実際にどのようなものがあるのか、その事例を見ていきましょう。
【事例1】ライフワークバランス実現のためにリモートワークを導入
ある加工食品製造業の企業では、営業職の残業の多さを解消するために、2011年にサマータイムの導入を決定。その2年後の2013年の夏、サマーマイムの実施に合わせたリモートワーク(在宅勤務)のトライアルを実施しています。
その翌年2014年からは、全国の事務間接部門のみという限定した従業員を対象に、リモートワーク(在宅勤務)の本格導入をスタートしました。事務間接部門で上司から認められた従業員なら誰でもリモートワークができるという制度です。
リモートワーク導入にあたり見直されたのは人事評価制度です。営業は売上と利益、そして計画達成の成果のみの評価に変更。その他の間接部門の従業員もデジタルな数値目標を設け、その達成率に応じて一時金が支払われるなどリモートワークの実施に合わせた制度へと変更しました。
リモートワークを導入した結果、営業担当者だけでなく仕事のみの人生になりがちだった管理職も働き方を見直すきっかけとなりました。この企業はリモートワークの導入によってライフワークバランスの実現、労働環境の改善に成功しています。
【事例2】優秀な人材の離職防止、職場環境改善のためにリモートワークを導入
ある自動車部品製造業の中小企業では、介護や育児など様々な理由によって起こる優秀な人材の離職を防止すること、そして時短勤務社員が在宅でも働けるようにすることなど、職場環境の改善を目的としてリモートワークを導入しています。
社内にはリモートワークの導入に懐疑的な意見もありましたが、トライアルとして2~3名からスタートしたことで、現在は導入に成功しています。
まずリモートワークの対象となったのは、育児や介護などを理由に柔軟な働き方が必要とされる従業員。
導入にあたってまずは在宅でも仕事ができるように、社内自席パソコンをリモートでも動作するように整備。
さらに勤怠管理は在宅中でも使用できるように設定を変更しました。
そして紙保管と印字された書類に関する業務が多かったため、紙の資料はPDF化するなどでペーパーレス化を積極的に実施。マネジメントとして始業と終業の際には上司へのメールを指示。社内ではリモートワーク導入にあたっての説明会を実施して従業員の持つ疑問を解消していきました。
その結果として業務の効率化に成功。さらに従業員は生活の充実度が向上し、育児中でもリモートワークが選択されるようになり、離職防止につながっています。
まとめ
リモートワークを導入する場合、ノートパソコンの準備など初期のコストはかかります。セキュリティを強固にしようとすればするほど、そのコストは大きくなります。
例えばノートパソコンが盗難被害にあっても対応可能なサービスとしては、ネットにあるデスクトップを利用する、仮想デスクトップもありますが、導入にはそれなりのコストがかかります。
しかし視野を広げて考えればリモートワークは業務を効率化できるだけでなく、様々なコストカット、そして従業員の満足度の向上が期待できます。またリモートワークは事例として紹介した以外では営業部のみ、もしくは週に2日だけ導入しているケースもあります。
リモートワークはいきなり導入すると、パソコン操作が苦手な社員はパフォーマンスが落ちるリスクもあります。リモートワークを導入する際はトライアルからスタートする、説明会を実施するなど、社内へ浸透させる方法も考えるべきだといえるでしょう。
参考:
▼経済産業省『2020年に向けたテレワーク国民運動プロジェクトによるテレワーク・デイ参加企業を募集します』
http://www.meti.go.jp/press/2017/04/20170418002/20170418002.html
▼総務省『テレワーク導入支援 事例集』
http://www.soumu.go.jp/main_content/000426476.pdf#search='%E5%8D%B8%E6%A5%AD+%E3%83%AA%E3%83%A2%E3%83%BC%E3%83%88%E3%83%AF%E3%83%BC%E3%82%AF+%E4%BA%8B%E4%BE%8B'
▼厚生労働省『テレワーク活用の好事例集』
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11900000-Koyoukintoujidoukateikyoku/tele-koujireisyuuH26.pdf

斎藤 千也/ライター
執筆者紹介文:
兵庫県出身のライター(フリーランス)。
会社員時代は主に人材派遣業界で営業や管理職として勤務。
2015年からライターとしての活動を開始。
これまで採用/転職/マーケティング関連のテーマを中心に1,000本以上の記事を執筆。
お問い合わせ先:
https://goo.gl/forms/gTHoBCEnmTwETMGT2
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