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  3. 2018.11.22

持続可能な街づくりから 未来に残るビジネスを考える(第2回)
オレゴン州 ポートランド レポート 後編


暮らす人が主体の街づくり実現しているポートランド。
そこには消費がモノからコトへ移行する現代のビジネスにフィードバックできるヒントもたくさんありそうです。前篇に引き続き、かつてポートランド市開発局で都市再生と経済開発の最前線を目撃してきた山崎満広さんに、今のビジネスシーンに不可欠な価値観をお聞きしました。

山崎 満広(やまざき みつひろ)

1975年東京生まれ。茨城県の工業高校を卒業後、95年に渡米。南ミシシッピ大学にて学士と修士号を取得。専攻は国際関係学と経済開発。卒業後、建設会社やコンサルティング会社、経済開発機関等へ勤務。2012年にポートランド市開発局に入局し、ビジネス・産業開発マネージャー、国際事業開発オフィサーを歴任しポートランド都市圏企業の輸出開発支援と米国内外からポートランドへの投資・企業誘致を主に担当。
2017年6月より独立起業し、地域経済開発、国際事業戦略、イノベーション・コンサルタントとして日米を中心に多くのプロジェクトを手がける。また、グローバル イノベーションデザイン コンサルティング会社Ziba Designの国際戦略ディレクター、つくば市まちづくりアドバイザー、東邦レオ顧問アドバイザー、拓匠開発株式会社顧問、大鏡建設株式会社顧問、ポートランド州立大学シニアフェロー等を兼任。
著書に第7回不動産協会賞を受賞した『ポートランド 世界で一番住みたい街をつくる』(学芸出版社)、『ポートランド・メイカーズ クリエイティブコミュニティのつくり方 』(学芸出版社)がある。

持続可能な“街づくり”は 長く愛され続ける“商品づくり”に似ている

“持続的可能性(サステナビリティ)”は、特に環境やエネルギー分野において使われることが多いですが、ビジネスを考えるうえでも重要な視点であると山崎さんは言います。

「中長期で自社の行く末を考えるべき経営者であっても、日々の課題に向き合うことが精一杯で、50年先、100年先の会社経営を想像するのは難しいものです」

日々に忙殺される経営者に気づきを与え、意識を広げるお手伝いをすることも山崎さんの役割のひとつ。

「コンサルティングの仕事では、一般的な事業戦略のお手伝いをするだけでなく、企業の意識を内側から変えるお手伝いもします。たとえばその会社に女性の管理職がいないと知っていても『御社には女性のマネージャーが何人いますか?』と経営者がドキっとするような質問をあえて投げかけます。持続可能な社会全体を考えれば、大前提として女性が幸せでないといけません。子供を生み育てやすい環境づくりがなければ、社会は廃れてしまうわけですから、企業も女性社員の幸せを考えなければ持続可能であるとは言えません」

企業の末永い繁栄を考えるうえでは、サステナブルな視点が欠かせない時代になったと言えるのかもしれません。

ポートランドはすべてに優しい。2001年には環境負荷の低いストリートカーが米国で初めて導入された。

ブランドの裏にある物語こそが いつまでも揺るがぬ魅力になる

“ブランディング”と聞くと、ロゴマークやWEBサイトなどのグラフィックデザインをイメージしがちです。しかし、ブランドの裏にある物語が伝わらないとすぐに飽きられてしまうそうです。

「個人の生き方や会社の姿勢こそが重要であるように、プロダクトやサービスの裏にある価値こそが大事です。裏にある物語・哲学がしっかりしていれば、たとえ看板商品のパッケージデザインが大きく変わってもその哲学に共感しているユーザーは離れにくいものです」

サステナブルな企業姿勢を示すことでファン獲得に成功している日本企業もあります。環境全体を考えた取り組みにも力を入れる無印良品は2012年にサンフランシスコに進出。
順調にファンを増やし、このたびポートランドへの出店も実現しました。次世代のため、社会のために、私たちを取り巻く課題を解決に向けた真剣な取り組みが企業価値を大きく引き上げている好例といえるでしょう。

海外での成功は、その土地の哲学を理解することが大前提

山崎さんは、日本メイカーと在オレゴン企業をつなぐ支援も積極的に行ってきました。いま多くの在米企業が日本に興味を持っていると言います。

「オレゴンと日本の企業をつなぐお手伝いをしていると、暮らしに対する哲学の違いを感じます。ポートランドでは、まず働く人の生活循環がもっとも大切にされ、“ものづくり”という視点では、ナンバーワンではなくオンリーワンにこそ価値があるとされます。職人にはクールな商品をつくっているという誇りがあるんです。ですから、大量生産大量消費で成長を続けてきた日本旧来のやり方のまま「年間2万個を発注するから半額に値引きしてくれ」というやり方はポートランドの地元メイカーではほとんど通用しません。彼らの多くは会社の成長の為に週末返上して夜中まで働くのはナンセンスと考えています。それでは長期持続は出来ませんし、優秀な若い人材も寄り付かなくなってしまいます。現地の文化を理解するという点で、ポートランドであれば、原料・製造工程・販売方法、作り手のライフスタイル、すべての点でサステナブルであることは欠かせないでしょう」

レザークラフトメイカー「OROX LEATHER」の起源は約80年前。家族で持続可能な経営を行っている。

ポートランドのまちづくりは、緑を増やし住む人の暮らしやすさを叶えながら、人口・経済を発展させてきました。山崎さんが、日本とアメリカの橋渡しをする際には、持続可能性を追求すること、次世代に環境を残すことこそが、未来の価値につながるということも伝えたいと言います。

山崎さんのお話しをお聞きして、100年先も残るビジネスを叶えるためには、同時に100年先にも残したい社会を想像することが何より大切であること。その想いを表明、実行し、ファンの共感を得ることが、持続可能なビジネスへ可能性を広げる足がかりとなるのだと感じました。

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星野 智昭/株式会社MADE FROM コピーライター・ディレクター

執筆者紹介文:

群馬県桐生市在住。長年にわたって企業取材を切り口にした広告クリエイションに携わる。
群馬への移住をきっかけに、地域の可能性に気づき、地場産品および観光ビジネスプランの開発に取り組む。その後も、つながりから生まれる地域活性を主眼に、国内外にてフィールドワークを重ね、2018年7月に地域ブランディングを主事業とする株式会社MADE FROMを設立。
同年夏にはアメリカ合衆国オレゴン州ポートランドに一時滞在し、持続可能な街づくりのあり方を取材。

Introduction

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