1. IT活用
  2. 2019.03.12

働き方改革を実現するRPAの実力


日本の労働生産性は世界でみても低い水準です。特にホワイトカラーの労働生産性の低さは深刻で社会問題にまで発展しています。

労働生産性が低い大きな理由に、事務作業の増大があげられます。事務処理に追われて本来の仕事の時間が取れない、事務処理で深夜まで残業するといったことも少なくありません。

そんななかで働き方を変え、生産性を向上させる手段としてRPAが注目されています。本記事ではRPAの内容や導入手順とともに実際に働き方を変えた事例を紹介していきます。

なぜ日本の企業は労働生産性が低いのか

業種を問わずさまざまな企業で長時間労働が問題となり、自殺者も出るなど社会問題となっています。長時間労働が強いられるのは、人口減少による人手不足など複雑な原因が絡みます。そのなかのひとつとして労働生産性の低さが指摘されています。

日本生産性本部の資料によると、日本の時間当たりの労働生産性は、OECD加盟国36か国中20位。主要先進7か国(G7)では最下位となっています。

企業がさまざまなテクノロジーを導入して合理化する努力をしているのに、なぜ日本では労働生産性が低いのでしょうか。いろいろな説がありますが、ひとつあげられているのがホワイトカラーの生産性の低さです。

日本で働く人のなかで頭脳労働をするホワイトカラーは約半分を占めており、年々増加しています。アメリカではアウトソーシングやITの導入で、ホワイトカラーの生産性を回復しているのに対して、日本はまだまだ遅れているとされています。

その理由として考えられるのが、「紙のやり取りが多い」ということです。請求書や申請書など紙をシステムで処理するには、人が紙に書かれている内容をひとつひとつシステムに入力する必要があります。

また、さまざまなサービスがシステム化されているのも業務量が増える原因となっています。例えば、他社の運営する情報提供サイトからデータをダウンロードし、自社のシステムに登録するといった作業も数が多いと重い負担となります。

もちろんこの一連の作業をシステムで自動化することも可能です。ただ、システム化できるほどの投資対効果がない場合は、自動化を見送り、Excelで作業しているというのが実情です。

RPAとは

RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)は、事務処理で疲弊する人の負担を軽くし、よりよい働き方を実現するツールと注目されています。RPAは一般に「ロボット」と呼ばれます。でもPepperのように形あるロボットではありません。あくまでもソフトウェアであり、目には見えないものです。

ロボットの役割は、人がシステムに入力したり、インターネットで情報を収集したりする作業を肩代わりしてくれるものです。人間の入力作業を記憶して自動化します。

RPAは次のようなメリットがあります。

・効果が見えやすい
単純作業をロボットに置き換えるため、効果が見えやすく、働く人も経営層も納得感があるというところが一番のメリットと言えます。

・プログラミングが不要
プログラムの開発をするのは使う人にとって高いハードルです。その点RPAはプログラム作成よりも簡単な手順でロボットを作ることができます。

・低コストで導入できる
新しいシステムを構築しようとすると、サーバーやOSなどを揃える必要があるだけでなく、プログラム作成も必要なため、高額の費用になることが多くなります。その点、RPAはパソコンが1台あれば動かせるので、コストも抑えられます。

RPA導入のポイント

とはいえ、いまやっている作業をそのまま自動化できるわけではありません。ロボットも得意不得意があります。RPAを導入したい業務を細かく細分化して、ロボットができるものと人間にしかできないことを分ける必要があります。ロボットの力が最大限発揮できるように業務の流れを見直すこともあります。

ロボットに任せられるのは次のような作業が考えられます。

・パソコン画面操作の自動化
例えば、勤怠データから残業時間の上限を超過している人を抽出して、その人にメールで通知するということが可能です。ただし、ロボットはデジタルデータでないと認識できないため、例えばタイムカードしかない場合は、タイムカードから勤怠データをExcelにまとめるなどの作業は人間が行う必要があります。

・ディスプレイ画面の文字、図形、色の判別
画面に表示される項目のラベル、ボタンから項目を特定して、適切な値を入力する作業が可能です。また、入力エラーとなった項目が赤く表示されている場合は、赤色を識別して、後でわかるように該当のデータをテキストで書き出しておくことができます。入力エラーとなった場合に再入力する判断は、あらかじめルール化されていない限りロボットが判断することはできません。ロボットが判断できなかったものは人間が処理する必要があります。

・別システムのアプリケーション間のデータの受け渡し
他社が公開する販売情報提供サイトから必要なデータを検索し、POSデータをダウンロードして自社のデータベースに取り込む、といったことが可能です。

RPAも成功すれば効果も高いのですが、うまくいかないケースも多いものです。
求人サイト「バイトル」などを運営するディップ株式会社では、いちはやくRPAツールを導入してきた経験から、よくある失敗を公開しています。

・社員にコンセプトが伝わらない
「働き方改革」というように経営者目線のコンセプトを掲げると、「自部門は生産性が低い」とみなされたと受け取られて、反感を買う恐れがあります。また、「自分の仕事が奪われてしまうのでは」という不安もあるでしょう。単純作業を減らして価値の高い業務に注力してもらうという本来の目的をしっかり伝えて理解してもらう必要があります。

・他社の成功例を真似しようとする
RPAは多くの企業が導入しており、成功例もたくさんあります。ただし、それはあくまで他社のもの。自社とは業務もリソースも異なります。自社の状況にあったツールを選択し、適用していく必要があります。

・大きな効果が見込める業務から適用してしまう
RPAを導入する作業は、対象となる業務が大きいほど社員の負荷も高まります。しかも、従来の業務と並行して導入作業をしなければなりません。社員は「むしろ前より大変になった」と感じ、モチベーションが下がってしまいます。
そうならないように最初は小さな業務から手を付けるのが最良の選択といえます。最初の負荷を軽くすることで「ロボットが入って手が空いたから、次にロボットにお願いする業務を検討しよう」という流れを作ることができます。

RPAを活用した働き方改革取組み事例

実際にRPAを活用している企業の事例をご紹介しましょう。

・23業務に導入、月間218時間を削減「昭和電機」

昭和電機株式会社は、電動送風機等の環境改善機器メーカーです。同社では広範囲の業務に積極的にロボットを導入しています。そのうちの一つが納期回答の作業です。今まで営業担当者は、顧客から受注すると基幹システムで納品予定日を調べ、納期回答書をFAXで送付していました。

そこで、納品予定日を調べて納期回答書を作成し、そのファイルを添付して各営業担当者にメールで送付するまでをロボットで行うことになりました。営業担当者はロボットから送られたメールの納期回答書を確認し、顧客に転送するところだけを行います。この取り組みにより、月間で92時間の作業時間を削減できました。

この他にも勤怠管理など23業務にロボットを導入し、月間218時間を削減しました。今後は社内のICTグループが各部門にヒアリングを行い、対象を広げる見通しです。
納期回答の例からもわかるように、一連の作業をすべてロボットに任せるのではなく、ロボットと人間で業務を細かく分担することで、業務にフィットしてかつ効果のあがる導入ができています。

・ルーティン業務の対応時間を約70%削減「マルコメ」

味噌を中心とした食品メーカーとして知られるマルコメ株式会社では、卸会社サイトが提供するPOSデータを収集しています。卸先企業は約50社あり、50社のそれぞれのサイトからPOSデータをダウンロードしなければならず、手間がかかっていました。

こうしたデータ収集作業をロボットに任せたところ、1社あたり20分かかっていたPOSデータ収集作業を5分に短縮でき、対応時間を約70%削減できました。

この作業は月に1回の作業ですが、情報システム部門の担当者2人が本来の業務とは別に行っていたため、負担がかかっていました。このように頻度は少ないけれども手間がかかる作業を最初のロボット導入の対象にしたことで、業務と並行してロボットの導入を行う際に、負荷を最小限に抑えることができた好例と言えます。

まとめ

人手不足が深刻化する中で生産性の向上は重要な課題です。人が少ないほど単純作業に追われ、本来の業務を阻害しているケースも少なくありません。
単純作業をロボットに任せることで、「気持ちに余裕が生まれ、周りの人を助けることができるようになった」「効率化のためのアイデアが生まれるようになった」という声をよく聞きます。単純作業の負担が軽くなるだけでも「もっとよくしていこう」という意識が生まれるのです。単なる業務の効率化だけでなく、働き方を変える可能性をロボットは秘めています。

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アリババジャパンプレス編集部

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