1. 貿易実務
  2. 2019.03.27

はじめての輸出前に確認したい!輸出法令で求められる手続きとは


前回は、海外の企業と取引を始める前に知っておきたい輸出管理制度の概要について解説しました。今回は、実際に輸出管理制度に則ってどのような手続きをすればよいのかについてお話していきたいと思います。

輸出してホントにOK?取引審査をしよう

自社の製品を輸出するときには、相手が取引をしてもよい相手か、また自社の製品をどこで使うのかを調べます。これを「取引審査」と言います。また、国内の企業と取引をするときも、海外に転売される可能性のあるときには取引審査が必要です。

・輸出してOKな相手かどうか

製品や技術を海外に輸出・提供する際は、次の4つのポイントを確認します。

①輸入者はどこのだれか。輸入者とエンドユーザーが異なるとき、両者はどういうつながりか。また、貨物・技術はどういうルートをたどるか。
②エンドユーザーの事業内容と貨物・技術の用途はあっているか。貨物の量は妥当か。
③エンドユーザーは軍需産業ではないか。また軍需産業やテロ組織と関係はないか。
④貨物や技術がどこで使われるのか。管理方法は問題ないか。

・国内取引も取引審査が必要なワケ

意外かもしれませんが、国内の企業どうしの取引の場合でも、取引審査をします。なぜなら、取引相手がウラで犯罪組織とつながっているかもしれませんし、兵器をつくっている海外の企業に売りわたす可能性もあるからです。そうなると、自社も間接的にそういった組織・企業活動に加担してしまうことになってしまいます。

したがって国内取引の場合でも、まず取引先が軍需産業やテロ組織にかかわっていないか、自社の貨物や技術が国内で使用・消費されるかどうかを確認します。

国内で使用・消費されるかどうかわからないとき、また製品が海外に転売される可能性があるときは、上記の「輸出等取引の場合」と同じようにチェックを行い、リスト規制やキャッチオール規制にあたるかどうかも判定します。それらに該当し、先方に求められた場合は、判定書を提出します。

・輸出金額が少なければ「少額特例」が使えることも

リスト規制やキャッチオール規制にあたるものは、本来、輸出許可が必要です。しかし、輸出価格が安ければ、許可がいらなくなることがあります。これを「少額特例」といいます。では、具体的にどれくらいの金額であればこの特例が使えるのでしょうか。

<適用できる貨物・金額>
少額特例が使えるのは、貨物が輸出貿易管理令(以下「輸出令」)の別表第1の5項~13項または15項にあたる場合のみです。

ここでいう金額とは、1回の輸出契約の総額のことです。たとえば、第15項の貨物の船積を2回にわけて、1回あたりの輸出価格を5万円にしたとしても、1回の輸出契約が10万円であれば基準を満たさないので、少額特例は使えません。

<適用できる国・地域>
輸出相手がホワイト国のときは適用対象、イラン・イラク・北朝鮮は適用対象外となります。その他の国・地域については条件付きで適用対象となります。

※1:輸出貨物が核兵器等の開発等のために用いられるおそれがある場合を定める省令
※2:通常兵器開発等省令

どうやって輸出許可を取得するの?

審査や判定をして、輸出許可が必要とわかれば申請をしましょう。ここでは、輸出許可の種類や申請方法について解説します。

・輸出許可には2つのパターンがある

輸出許可には、「個別許可」と「包括許可」の2つのパターンがあります。電車の「きっぷ」と「定期券」にたとえると、個別許可がきっぷ、包括許可が定期券のような役割です。

<包括許可>
包括許可とは、一定の条件をクリアすれば期限内に何度でも輸出できる制度です。有効期限は最大で3年となります。

包括許可には次の5つの種類があります。

(参照元:経済産業省「包括許可の概要」< https://www.meti.go.jp/policy/anpo/apply13.html >)
※3:機微度 …「大量破壊兵器や武器の開発・生産に結びつく可能性」のこと

<個別許可>
個別許可とは、包括許可が使えない仕向地・貨物を輸出するときに必要な許可のことを指します。許可書の有効期限は原則6ヶ月ですが、必要なときは6ヶ月より長くしてもらえることもあります。 

・申請はどうやってするの?

輸出許可の申請方法には3つのパターンがあります。

①窓口で申請する
個別許可の場合は、貨物の種類や仕向地によって申請先が異なるので、詳しくは経済産業省 安全保障貿易管理のウェブサイトにある「申請書類・窓口一覧(貨物)」< http://www.meti.go.jp/policy/anpo/apply09.html >で確認しましょう。

包括許可の場合は、一般包括許可・特別一般包括許可は経済産業局・通商事務所へ、それ以外は経済産業省 安全保障貿易審査課へそれぞれ申請します。

②郵送で申請する
郵送で申請する場合は、以下をそろえて送ります。できれば書留郵便を使うとよいでしょう。送付先は①の「窓口で申請する」を参考にしてください。 

● 申請書類
● 受領書の送付用封筒(簡易書留の金額の切手を貼る)
● 許可証の返信用封筒(普通郵便の金額の切手を貼る)
● 送り状

③電子申請 をする
「NACCS貿易管理サブシステム」というウェブサイトで申請します。事前にNACCSセンターへ利用申し込みを行い、経済産業省へ届け出ます。その後NACCSセンターから利用開始日の通知が届くと、電子申請ができるようになります。

・仕向地によって必要書類は異なる

輸出許可申請に必要な書類は、許可の種類・項番・仕向地により異なります。経済産業省の「安全保障貿易管理」のサイトにある「個別許可申請」<http://www.meti.go.jp/policy/anpo/apply10.html>と「包括許可申請」<http://www.meti.go.jp/policy/anpo/apply13.html>のページを参考に準備を進めましょう。

例)輸出令別表第1 の第15項の貨物の場合

<アメリカ合衆国向けの貨物について個別許可申請をする場合>
● 輸出許可申請書
● 申請理由書
● 契約書などの書類とそのコピー

<中国向けの貨物について個別許可申請をする場合>
● 輸出許可申請書
● 輸出許可・役務(プログラム)取引許可申請内容明細書
● 契約書などとそのコピー
● 輸出令別表第1の記載項目との対比表
● カタログや仕様書
● エンドユーザーの事業内容などがわかる資料
● エンドユーザーの誓約書とそのコピー
 

輸出手続きをする前にもう一度確認!

輸出通関の手続きをとる前に、法令違反がないかどうか、もう一度チェックしましょう。具体的には以下の点を確認します。

・貨物の輸出の場合:出荷伝票と貨物の中身が同じかどうか

出荷伝票と輸出する貨物の内容が同じかどうかを確認します。もし内容がちがっていれば、輸出許可申請をやりなおさなければならない可能性もあるため、いったん出荷は停止すべきでしょう。

・技術の提供の場合:規制にあてはまるかどうか

提供依頼内容が、キャッチオール規制・リスト規制にあてはまるものかどうかを再度確認しましょう。もしいずれかにあてはまる場合は、経済産業大臣から受けた許可の範囲内であることも忘れずにチェックします。

書類はいつまで管理すればいいの?

無事輸出手続きも終わり、ほっと一息つきたいところですが、まだやるべきことがすべて終ったわけではありません。最後に、輸出の手続きに使った書類を整理して保管します。では、どの書類をどれくらいの間、保管しなければならないのでしょうか。

・書類はどれくらいの期間保管するの?

まず、書類は7年または5年保管するのがのぞましいです。なぜなら、法令違反があとからわかった場合、刑事告訴できる期間が輸出令別表第1と外為令別表の1項から4項の規定に違反した場合は7年、5項から16項の規定に違反した場合は5年とされているからです。もし違反がわかって訴えられたら、証拠資料を準備しなければならないため、時効が成立する時期まで書類の保管が必要になるのです。

・保管すべき書類はどれ?

保管すべき書類は以下の通りです。

● 輸出等許可申請関連
  インボイス、船荷証券(B/L)、Air Waybill、輸出申告書などの通関関連書類、輸出許可書、一般包括許可書
  など。

● 自主管理関係の書類
  取引審査や用途審査、キャッチオール規制審査などの書類、包括許可を利用した貨物を輸出した記録など

● 該非判定関係の書類
  該非判定書、パラメータシート

● 法令規定関係の書類
  安全保障貿易関連法規、通達集など

●その他
  教育記録や事故報告書など

輸出許可制度は、わが国の企業が大量破壊兵器や通常兵器の開発・生産に知らないうちに関与してしまうことを防ぐために、なくてはならない制度です。面倒でも、自社製品・技術がリスト規制やキャッチオール規制に該当しないかを入念に確認し、少しでも不安がある場合は経済産業省に問い合わせるようにしましょう。

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あさきみえ

執筆者紹介文:

大阪府枚方市出身。立命館大学法学部卒業。
学生時代は国際法や国際政治学を中心に学ぶ。

卒業後は、NVOCC(自らは国際輸送手段を持たない貨物利用運送事業者)にて、通関書類の作成や港にある倉庫とのスケジュール調整、D/Rのチェック、原産地証明書をはじめとする各種証明書や海上保険の手配、船会社との海上運賃交渉など、輸出業務全般に従事。途中、主要取引先だった大手専門商社の海外事業部で駐在員として勤務した経験も持つ。

その後いくつか事務職を経てライターとして独立。現在、貿易・ビジネス・法律・経営などの分野を中心に、今まで執筆してきた記事数は1000本以上。記事の企画の立案から執筆・校正まで、幅広く手掛けている。

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